1992 Fiscal Year Annual Research Report
知覚順応に果たすボディ・イメージの役割:その視覚的性質
Project/Area Number |
04610045
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
吉村 浩一 金沢大学, 文学部, 助教授 (70135490)
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Keywords | 変換視 / 上下反転視 / ボディ・イメージ / 感覚一運動協応 |
Research Abstract |
1992年8月に、眼上鏡式上下反転視実験を行った。被験者は本研究者自身であり、上下反転鏡着用期間は14日間であった。着用期間中、定期的に11種類のテストを行い、別に内観報告データの収集も行った。 本実験の最も重要な目的は、2年前の直角プリズム式上下反転視実験と比較するところにあった。同じく上下反転視状況ではあっても、直角プリズム式めがねの場合には直前方方向しか視野内に捕らえられないため、たとえうつむいて足元を見ようとしても、自己身体の多くは視野内に入ってこない。しかも、このような姿勢を維持しながら日常生活を遂行することはできない。それに対し、今回用いた眼上鏡式上下反転鏡では、視方向が足元付近であるため、自然な姿勢のまま容易に自らの身体を視野内に捕らえることができる。本実験を行うに先立っての仮説は、上下反転視状況への知覚的順応が進行するためには自らの身体が上下反転視野内に適切に定位される必要がある、というものであった。もし、この仮説が正しいなら、自らの身体像を容易に視野内に捕らえることのできる今回の眼上鏡の方がプリズム式のものより上下変換された視野内での新しいボディ・イメージの構築が容易に進むと考えられた。実験結果は次のごとくであった。今回の眼上鏡では、自己身体像から外界の枠組み的視覚像(床や壁)までの連続感、すなわち斉合性が容易に得られた。しかし、そのことが直ちに見える位置に自己身体を知覚するという合一感を生むことにならなかった。個々の視対象は、床や壁という視覚的枠組みとの関係において正立して知覚されるところにまでは順応は進む。しかし、感じられる自己との関係における正立感までは至らない。これはひとえに、見える自己と感じられる自己との合一が達成されないゆえであることを、本研究を通して明らかにした。
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