1992 Fiscal Year Annual Research Report
老年者の空間的記憶及び心象機能に関する神経心理学的研究
Project/Area Number |
04610057
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
八田 武志 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (80030469)
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Keywords | 老年者 / 空間記憶 / 顔の記憶 / 系列位置効果 / 脳損傷(右脳)患者 / アルツハイマー患者 |
Research Abstract |
いろいろと実験に用いる刺激の選定に検討を加えてきたが、最終的には、老人の顔、若者の顔、幾何学図形、乱数字、平がな無意味綴の5種とした。これらの刺激を用いて今年度は2つの実験を行った。一つは大学生を対象とするもので、一つは老人を対象とするものである。老人の場合は健常老人と老人病院に入院中の局所脳損傷者の老人である。 実験は45枚の刺激を順次1秒間呈示し、以前に一度でも呈示されたものかそれとも新しいものかを判断させるものであった。この場合、再呈示される刺激は、3秒後と15秒後に出現する2条件が設けられている。 今後さらに被験者の数を増やしていく予定であり、最終的な結果がどのようなものになるかについては明らかではないが、今回の報告のために仮に行ったHit数の分析結果からは、以下の4点がうかがえるので記載しておくことにする。 (1)健常老人の記憶能力は若年者に比べてそれ程著しく劣るわけではない。 (2)人の顔や幾何学図形についての記憶は、老人の場合比較的良好であるが、数字や無意味綴の記億については低下が認められ、材料による選択性がありそうである。 (3)若年者の場合、身近に老人がいる者といないものとでは老人の顔についての記憶はいるものについてはよいが、いない者では劣る。 (4)若年者も老年者もおよそ3秒以内に呈示される刺激と15秒後に呈示される刺激の記憶再認には顕著な差異は認められない。 以上の仮のデータについても2つの学会において発表する予定にしており、すでにその手続きを終えている。
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