1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04610087
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
中垣 啓 国立教育研究所, 教育指導研究部, 室長 (00124181)
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Keywords | 選言型推論 / 形式的操作 / 選言文 |
Research Abstract |
選言文の前件と後件とが両立可能な選言文(例えば、「赤色の箱、または、バナナの入った箱」)を用いて選言型4枚カード問題の解決過程に関する発達的研究を小学2、4、6年生、中学2年生の4学年各学年20名計80名を被験児として実施した(なお、当初の計画で予定していた選言型3段論法については予備調査に予想以上の時間がかかったため、次年度にまわし、その代り、選言文解釈を同じ被験児に実施した)。見い出された主要な反応タイプは選言文の論理的解釈と一致したカード選択を行う〈選言的反応〉、選言文を連言文であるかのように解してカード選択を行う〈連言的反応〉、一部のカードに対しては連言的に、一部のカードに対しては選言的にカード選択を行う〈半選言的反応〉で、連言的反応→半選言的反応→選言的反応という発達過程を経ることが明らかになった。特に、論理的正答である選言的反応は小2生、小4生それぞれ5%であったのに対し、小6生40%、中2生55%であった。この結果は選言型4枚カード問題がBraine & Rumain1981の課題と類似の課題であるにもかかわらず、彼らの予測とは違って小学生低中学年ではほとんどできないこと示している。このことは彼らの実験で5、6歳児にも選言型推論ができたように見えたのは、彼らの用いた選言文はその前件と後件とが両立不可能であって、両者の両立の可能性をあらかじめ排除しているため、選言型推論に固有の困難が回避されているからであるとする、われわれの当初からの予測を裏づけるものであり、半数以上の者が正答できるようになるのは中学生以降であったという結果は、形式的操作が可能となるのは前青年期であるとするジュネーブ学派の主張を検証するものであった。なお、同時に実施された選言文解釈と選言4枚カード問題との関係については、前者の方が後者より発達的に先行し、前者は後者が可能になるための前提であることが示された。
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