1992 Fiscal Year Annual Research Report
世紀転換期の日本とドイツにおける都市化と子ども期に関する比較史的研究
Project/Area Number |
04610149
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鳥光 美緒子 広島大学, 教育学部附属幼年教育研究施設, 助教授 (10155608)
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Keywords | 都市化 / 子ども期 / 世紀転換期 / ドイツ / 比較史 / 社会化過程 |
Research Abstract |
西欧圏の子ども期の変化については、従来、十七・十八世紀に重要な断絶線のあることが、共通認識とされてきた。このような指摘は、確かに、子ども期についての言説の変化に注目する限り、また、富裕な教養市民層の実態に注目する限り、正当であるといえるだろう。しかし、言説ではなく実態に、そして、富裕階層ではなく、人口の大多数を占める庶民層の子ども期に注目するとき、重要なのはそれより一世紀後の世紀転換期であり、しかもその際、子どもたちの生活に変化をもたらした重要な要因が都市化にあったことが、最近のドイツ語圏の研究によって指摘されてきた。 このような研究状況を考慮して本研究は、今年度においては、ドイツ語圏の研究動向をおさえることを中心に作業を進め、その成果の一端を、『幼年教育研究年報』掲載の論文にまとめた。 それらの作業を通じて明らかになったことのなかで、とくに重要と思われるのは以下の二点である。 1.都市化を契機とする子ども期の生活空間の変化の方向は、「室内化」の概念によって捉えられるのではないかということ。この概念は、もともとは西欧圏の都市化を念頭において提起されてきたものではあるが、わが国の都市化傾向にも、おおよそ当てはまるものと予想される。 2.日本とドイツという、全く異なる二つの社会の比較を行う前に、ある程度似た都市社会相互の比較が有効であろう思われる。その際参考になるのは、ライデンとヴィースバーデンの二都市を対象に行われた聞き取り調査にもとづく研究プロジェクトである。現在、広島と沖縄を対象に同様の調査が可能か、予備調査を進めている。 同時に、「室内化」過程について、文学作品も含めてそれを明らかにする資料を探索していくつもりである。
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