1992 Fiscal Year Annual Research Report
高年齢教員のアイデンティティー類型に関する調査研究ーライフコースの観点からー
Project/Area Number |
04610167
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 一生 福岡工業大学, 工学部, 教授 (00037029)
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Keywords | 教員 / アイデンティティー / ライフコース / 教職生活 / 危機 / 定年退職 / 教職教養 / 高齢化社会 |
Research Abstract |
本年度の研究計画に従って,福岡県内の小学校教員500名,中学校教員500名,山口県内の小学校教員400名,中学校教員400名、合計1800名に対し質問紙調査を実施した(回収率45.6%)。また,福岡市と下関市の小学校教員各3名,同じく中学校教員各3名,合計12名について面接調査を試みた。面接調査は次年度も継続する予定であるので、今年度は質問紙調査の結果に基づいて研究成果の概要を述べる。 (1)教員がその経歴のなかで遭遇するcritical incidentには,児童生徒の学習指導,生活指導に集中する傾向がみられるが,他に学校,教頭などとの関係や教育委員会,教員組合との関係に多くみられる。この傾向は山口県より福岡県の場合に顕著である。 (2)アイデンティティーの様相を退職への意識の有無についてみると,管理職で2割5分から3割3分,教諭で4割5分から6割近くの教員が、これまでの経歴のなかで少くとも2,3度以上にわたり退職を意識している。この持徴は男性よりも女性教員にやや多くあらわれるが,とくに中学校の場合に強くみられる。また,定年前退職についても,小中学校ともに女性教員の場合に希望するものが箸るしい。 (3)定年退職前に成就しておきたい内容を持つものが教諭よりも概して管理職に多く,また,女性教員は男性教員より一般に低調である。これらの内容のなかで,自己の実践の跡を記録や単行本にまとめたり,後進の指導に意欲を燃やす者が3割前後に及んでいる点は注目に値いする。 (4)教職教養として専問の知識・技術に劣らず,否それ以上に一般教養の向上を重視する者が,管理職と教諭,男性と女性,あるいは小中学校の別なくみられる点は,生涯学習の面から考慮すべき重要性を示唆する。 (5) 次上の諸点について,次年度は面接調査によってその内容を深め,高年齢教員のアイデンティティーの類型設定を試みる予定である。
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