1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04610194
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
菅原 憲二 千葉大学, 文学部, 助教授 (00162850)
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Keywords | 豊後岡藩 / 中川氏 / 家臣団 / 諸士系譜 / 勤録 |
Research Abstract |
1.中川家文書が近代初期に整理された不完全な目録によって、かなりの部分、しかも近世初期の重要な部分を散逸させたことが判明した。しかし家臣団史料については若干部分を除き、その大半を残していることも確認できた。このことは家臣団データベース作成に有利な条件となっている。また、藩主治績編纂事業で蒐集された史料がかなり残されており、二次的ではあるが散逸部分を補う貴重なものとなっていることも確認できた。 2.マイクロフィルム撮影によって蒐集した家臣団史料などによって得られたデータをもとに下記のことが明かとなった。 (1)上級家臣団史料(「諸士系譜」)は、近世中期、藩主中川家の治績編纂事業と並行する形で藩校由学館の藩士達によって作成され、天明年間、18世紀末にひとまず成立した。以後は担当重臣らによって書き継がれた。 (2)「諸士系譜」は、中川家との主従関係成立時期を基準として編成され、諸士番号が与えられた。その序列は格禄(知行高や役職)とは別個の、諸代門閥家臣を頂点とする家臣団ヒエラルヒーとして機能した。 (3)「諸士系譜」成立期はむしろ藩内秩序の再編期であり、藩政改革が実施された時期と重なり、下級家臣団史料(「勤禄」)に検証される下級家臣団の藩政への進出が進行した時期であった。 3.既整理分1500点余りについて中川家所蔵文書の目録を作成し刊行した。ただし計画していた家臣団に関するデータベースは一部を作成していたが、限られた予算では目録に収載することは不可能で、断念した。しかし、近世中期の上級家臣団編成原則に関わるデータを参考表として掲載した。このデータおよび、それに基づく研究公開は今後の課題である。
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