1992 Fiscal Year Annual Research Report
大航海時代のスペイン語文書に見られる他者認識方法に関する考察
Project/Area Number |
04610231
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Research Institution | Osaka University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
染田 秀藤 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (70067974)
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Research Abstract |
従来、スペイン人による「新大陸」征服は先住民であるインディオに対するキリスト教化(魂の征服)を大義名分として正当化されてきた。すでに15世紀末より、インディオの宗教を邪教と断定し、彼らの文化的能力までも否定する主張が大きく唱えられていた。とりわけ、当代随一のアリストテレス学者フワン・G・デ・ヒプールベダは新大陸へ一度も赴くことなく、もっぱら当時スペインで出版されたクロニカ(記録)や報告を根拠にしてインディオを自然奴隷(先天的奴隷)と規定し、スペイン人による征服を哲学的分野から正当化したし、16世紀後半になると、仏、英など、政治的、宗教的にカトリック国スペインと激しく対立する国々で所謂「黒い伝説」が生まれたため、スペインのインディアス(新大陸)支配の正当性を確証する作業が急務となり、ペルー副王領では、第五代副王フランシスコ・デ・トレドガインカ専制君主説を裏付けるようなインカ史の編纂に従事し、数篇のクロニカが作成された。このような政治的意図のもとにインディオの人格や文化を否定しようとするスペイン人の態度に対し、自己の帰属する文化の優秀性を訴え、スペインによる征服の法的不当性を指弾するインディオが現われた。その代表的人物がペルーのインディオ、フェリペ・ワマン・ポマであり、彼はスペイン人到来以前にアンデスのキリスト教伝道が行われ、アンデスのインディオはスペイン人以上にキリスト教的精神に溢れていると主張した。文字のなかったアンデスに生まれたインディオが文字(スペイン語)をもって支配者を批判する姿勢の中に、他者認識におけるヨーロッパ中心主義への挑戦を読み取ることができる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 染田 秀藤: "先住民の記録の分析(I)〜「インカ帝国史」をめぐって(] SY.encircled1. [)〜" Estudios Hispanicos. 17. (1993)
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[Publications] 染田 秀藤・友枝 啓泰共著: "アンデスの記録者ワマン・ポマ〜インディオが描いた真実〜" 平凡社, 286 (1992)