1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04610261
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Research Institution | The University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
玉城 政美 琉球大学, 法文学部, 助教授 (30101455)
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Keywords | 古謡 / 機能 / 構造 / 主題 / 歌唱主体 / 場 / 宗教歌謡 / 世俗歌謡 |
Research Abstract |
池間島の古謡を、機能・構造論的観点から研究するために、対象地点の池間島に数度臨地調査を実施して、50首ほどの古謡を収集することができた。これらの資料について国際音声記号およびかな文字を用いて翻字した。既刊の文献・音声資料とともに、歌詞の対訳をつけた。故謡を機能・構造論的観点から研究するためには、(1)場の構造、(2)歌唱主体、(3)歌詞の内容などについて、その実体を把握する作業が前提になる。歌謡を実現する場が宗教儀礼的であれば、歌詞の内容もそれにふさわしい主題の歌謡がうたわれるし、世俗的な場では、社会における人間関係を主題にした歌謡がうたわれる。また、宗教歌謡を実現するにはその歌唱主体は特定の宗教者に限定され、そこでは世俗の原理は排除される。世俗歌揺を実現するには歌唱主体に関する制約はなく、個人的な趣味や能力に応じて、自由に歌揺が人々に解放されている。池間島の古謡は、上記の三つの観点から、(1)宗教歌謡と(2)世俗歌謡に分類することができる。宗教歌謡の場は、ユークイ(世乞い)とよばれる、豊年祈願祭が主であり、そこでは、紙に豊作を祈願する主題の歌謡がうたわれる。つまり、宗教的な場における、宗教的な主体による、宗教的な内容の歌謡がうたわれるのであり、ここに宗教歌謡の機能が存在する。また、世俗歌謡の場は、ミャークヅツや祝事や宴会の際に、人間関係を主題にした歌謡がうたわれる。このように、歌謡の場や歌唱主体や歌詞の内容などが緊密に相関しあっていて、歌謡は、それぞれの関係にふさわい機能を実現しているのである。社会生活における、歌謡の機能・構造の厳格な存在は、琉球列島の他の島々でも散見できるものであるが、池間島のそれは、いちじるしく典型的である。
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