1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04610283
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
道家 弘一郎 聖心女子大学, 文学部, 教授 (40052112)
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Keywords | 論理学 / 修辞学 / 詩学 / ペトルス・ラムス / ウォルター・オング / 内村鑑三 / 聴覚的想像力 |
Research Abstract |
本年度は、全く新しい角度からの研究に着手したために、いまだ十分な業績をあげていない。筆者の従来の研究は、ミルトン、とくにその主著『失楽園』を神学思想史的な観点から理解することであり、それは『ミルトンと近代』(研究社出版)という一冊の書物になって、一応の結実をみた。それと同時に筆者がつねに関心をいだいてきたのは内村鑑三であった。むしろ内村への関心がミルトンへの関心に先行する。内村によって開かれたキリスト教への関心が、英文学のなかでも最もキリスト教的なミルトンへの研究に向かわせたのであった。かかる自己の思想・信抑の基盤を明確にするため、従来、内村について書いてきた文章をまとめ、『内村鑑三論』を公刊した。その原稿整理etcのために、この研究書を当てることができたのは大きな幸いであった。 ともあれ、このようにして、筆者の研究は一つの区切りをつけることができた。したがって今後は従来とは全く異なる研究を志し、着目したのが、ミルトンの「詩学・修辞学・論理学」の側面である。ミルトンは、当時の最も著名な論理学者ペトルス・ラムスをもとにしてラテン語で『論理学』という教科書を書いている。イエール版全集でその英語訳を行なっているのがイエズス会神父オング師である。本年度は、ミルトンの論理学を読むと同時に、オング師の著書を読んだ。オング師の説く、ことばと音との関係のごときは、筆者が、「ミルトンと近代」に「見ることか聞くことか」という副題を付して処女作以来追及してきた問題とー一致するところ多く、本年度に予定された研究費支給と相まって、実り多い業績が挙げられることを期待している。
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