1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04610290
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
新田 春夫 東京大学, 教養学部, 教授 (00012443)
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Keywords | ドイツ語史 / 近世ドイツ語 / テキスト言語学 / 統語論 / 複合文 / 副文 / 枠構造 / 接続詞 |
Research Abstract |
現代ドイツ語における文の統語構造は極めて複雑であるが、それは、大量の情報をコンパクトな形で伝達しなければならないといった社会的要請によるものと考えられる。その際、大規模な名詞句である副文は、主文との統語的境界を明確にする必要があり、これが枠構造といった主文とは明確に異なった語順の確立を促したと考えられる。また、このことは現代ドイツ語が書き言葉的性格を強めたこととも関連している。 本研究では、初期新高ドイツ語で書かれた散文物語を素材に、文の統語構造の複雑化と枠構造の確立との相関関係をテクスト言語学視点から考察した。その結果、主として次のような知見が得られた。 1)初期新高ドイツ語に頻繁に見られる枠外配置は次のようなテキスト構成的構能を担っている。 i)意味的なまとまりを示す。ii)意味的なまとまりを、(1)リズムを生み出す、(2)耳で聞いて理解しやすいといった語用論的な目的で配置する。iii)特定の意味的なまとまりの焦点化、強調する。iv)情報の補足、繰り返し、言い換えをする。2)初期新高ドイツ語では、主文と副文の形態的区別は大抵の場合明確であるが、一部の副文には、後景情報を表すといった語用論的機能は認め難く、その点では主文に並列した場合と大差ないと考えられる。3)句読法、枠外配置、一部の副文などによって示される大小の意味的な単位の配列は、現代語と異なって重層的なものではなく、出来事の時間的な流れに沿った、並列的な傾向が強い。これは、朗読されたものを耳で聞いて理解する物語散文作品という社会的、時代的背景やテキストのジャンルと深くかかわっている言語的特徴である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Haruo Nitta: "Kasuskennzeichnung und Wortstellung in der Nominalphrase des Fruhneuhochdeutschen-sprachtypologisch gesehen" Festschrift fur Werner Besch. 89-104 (1993)
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[Publications] Haruo Nitta: "Theoretisch-methodische Uberlegungen zur Erforschung des Sprachwandels des Deutschen-vom sprachtypo-logischen Gesichtspunkt betrachtet" Mattheier/Nitta/Ono,Mitsuyo(Hrsg.):Methoden zur Erforschung des Fruhneuhochdeutschen. 9-15 (1993)
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[Publications] 新田春夫: "近世におけるドイツ語の発展-その方向性の解釈をめぐって-" 京都ドイツ語学研究会会報. 7. 33-35 (1993)
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[Publications] 新田春夫: "初期新高ドイツ語における語順のテキスト言語学的考察" ドイツ語学研究. 2 (印刷中). (1994)
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[Publications] 新田春夫: "ドイツ語、ことばの小径-言語と文化の日独比較" 大修館, 210+10 (1993)
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[Publications] Mattheier,K./Nitta,H./Ono,M.(Hrsg.): "Methoden zur Erforschung des Fruhneuhochdeutschen" iudicium verlag, 197 (1993)