1992 Fiscal Year Annual Research Report
スラブ語のテンス・アスペクト体系のテクスト文法的研究
Project/Area Number |
04610300
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 昭裕 京都大学, 文学部, 助教授 (50135498)
|
Keywords | スラブ語 / アスペクト体系 / テクスト文法 / 古ロシア年代記 |
Research Abstract |
本研究は、スラブ語の最も古い段階におけるアスペクト体系の成立と発展の過程、その機能を、テクスト文法の立場から、明らかにすることを目的とするものである。 資料面から言うと、本研究の柱は3つある。すなわち、1)ギリシア語福音書の忠実な翻訳であると同時にスラブ語の文字資料としては最も古い古代教会スラブ語福音書、2)それよりも成立の年代は若干さがるがスラブ語本来の資料として大きな価値を持つ古ロシア年代記、3)両者の中間にあってギリシア語からの翻訳であるのかスラブ本来のものであるのか必ずしも分明ではないが、極めて豊かな内容を持つ、聖者伝『キリル・メトディオス伝』である。以下それぞれに分けて述ベる 1)に関しては、研究代表者が以前から行っていたギリシア語福音書原典と古代教会スラブ語福音書の本文テクストのより厳密な比較・対照作業を進め、特にテンス・アスペクト形式の対応関係という観点から、両者の関係を整理する作業を進めた。 2)に関しては、スラブ語本来の書き言葉の成立という観点から研究を行い、古ロシア年代記の中で最も古く、資料的にも文学的にも極めて大きな価値を持つと言われる『過ぎし年月の物語』と中世ロシアにおいて特異な地位を持って発展した自治都市ノヴゴロドの町の歴史を述ベた『ノヴゴロド第1年代記古輯』を対照し、両者の成立の事情、テクストの構造、そして言語的な特徴が互いにどのように関係しているかを明かにした。 3)に関しては、本年度は基礎的資料の収集、すなわち『キリル伝』、『メトディオス伝』の幾つかの詳述本、簡略本の本文テクストのデータ化作業を行ったにとどまっている。次年度はこの部分の研究に最も力を集中したいと考える。
|