1993 Fiscal Year Annual Research Report
スラブ語のテンス・アスペクト体系のテクスト文法的研究
Project/Area Number |
04610300
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
佐藤 昭裕 京都大学, 文学部, 助教授 (50135498)
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Keywords | スラブ語 / アスペクト体系 / テクスト言語学 / 古ロシア年代記 / 聖者伝 |
Research Abstract |
本研究は、1)ギリシア語原典の忠実な翻訳であると同時にスラブ語の文献資料として時代的に最も古い古教会スラブ語の福音書、2)成立の年代は若干新しいがスラブ語本来の資料として大きな価値を持つ古ロシア年代記、3)翻訳テクストであるのかスラブ本来のものであるのか必ずしも分明ではないが、物語的な要素と聖書の解き明かしという2つの要素を含み、内容的にもきわめて豊かな聖者伝、『キリル伝』と『メトディオス伝』の3種の文献を資料に、テクスト言語学の立場から、スラブ語のアスペクト体系の成立と発展の過程、その機能を明らかにすることを目標とする。 本年度は、研究の柱となる3種の資料のうち、とくに『キリル伝』、『メトディオス伝』の研究に力をそそいだ。前者については14〜15世紀に成立した詳伝2種、略伝1種、後者については12世紀に成立した詳伝1種と15世紀に成立した略伝1種のテクストを詳細に読み、そこに現れるすべての動詞の形式をその不定詞に従って整理する作業を行った。現在その基本的データはほぼ完成している。その結果、従来、古教会スラブ語福音書においてはその使用がほぼ2人称単数の形式に限られ、一方で古ロシア年代記の言語においてもすでに使用が散発的になっていた動詞の完了の形式の使用について、多くのデータを収集することができた。また、発言の動詞glagolatiとrestiの用法についても興味深い知見を得ることができ、動詞のテンス・アスペクト体系全体についての分析もなお進行中である。 さらに、当初の目標である動詞体系の研究からは若干はずれるが、やはりテクスト言語学の立場から、si、tu、onuという3種類の照応形の使用に関して、古教会スラブ語福音書、文学作品としての性格を持ち、独自の「語りのスタイル」を持つとも考えられる古ロシア年代記、おそらくは両者の中間に位置する『キリル伝』、『メトディオス伝』の言語を比較対象し、その違いを定量化することを行った。 以上の研究成果については、今後引き続き発表していきたい。
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