1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04620014
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Research Institution | OITA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
永田 秀樹 大分大学, 経済学部, 教授 (60136778)
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Keywords | 違憲審査制 / イタリア憲法裁判所 / 合憲解釈 |
Research Abstract |
今年度は,国別の研究と違憲判断の方法や判決の効力に関する横断的研究を並行して進めてきたが,成果としては「イタリアの憲法裁判」覚道豊治古希記念論集『現代違憲審査論』(法律文化社,1995年刊行予定)をまとめるだけにとどまった。イタリアは戦後多党分立にもかかわらずキリスト教民主党が常に政権の中枢にあって本格的な政権交代が存在しなかった。その点ではヨーロッパの中では異質であり,むしろ日本と同質性をもつ。そのため,コマ-スの研究などではイタリアの憲法裁判所は,現実政治に強い影響力をもたないとされてきた。確かにドイツほどの影響力はもっていないが,付随的違憲審査での勝訴率10%に示されるように,日本とは比較にならないほどの積極姿勢が見られる。とくに70年代までは,新憲法に定められた民主主義の価値実現に非常に積極的であり,しばしばこの点で伝統的な価値に固執する最高裁判所(破毀裁判所)と鋭く対立した。したがってイタリアにおいても憲法裁判所特有の機能は,ほぼ制憲者の意図に沿って実現されたといえる。 またイタリアの憲法判断の方法について,認容判決と棄却判決のほかには,これまで合憲解釈の手法しか紹介されてこなかったが,この研究を通じて,一部違憲や適用違憲に相当する一部認容判決や操作的判決,さらには,ドイツの警告判決に相当する指導判決の手法と役割も紹介することができた。その中でイタリアの合憲解釈は,いわゆる違憲判断を回避するための消極的手段ではなくて,通常の裁判所の法律解釈権の境界領域に憲法裁判所が踏み込むための積極的手法であることなどを明らかにした。
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[Publications] 永田 秀樹: "合憲判決の方法" 別冊ジュリスト・憲法判決例百選II(第3版). NO.131. 414-415 (1994)
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[Publications] 永田 秀樹: "政党に対する国庫助成" 別冊法学セミナー・司法試験シリーズ憲法I. 64-66 (1994)
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[Publications] 永田 秀樹: "政党助成の憲法論" 憲法問題. 6. (1995)
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[Publications] 高田 敏ほか: "現代違憲審査論" 法律文化社, (1995)
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[Publications] 森 英樹編: "政党国庫補助の比較憲法的総合的研究" 政党の公的性格と国庫補助, 223-240 (1994)