1992 Fiscal Year Annual Research Report
企業集団の環状的株式相互保有に対する会社法的規制に関する研究
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04620018
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
遠藤 美光 千葉大学, 法経学部, 助教授 (10152026)
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Keywords | 営利性構造の歪曲化 / 資本空洞化 / 会社支配権の歪曲化 / 法人株主化 / 情報開示規制 / 時価評価 / 国際会計基準 / 相式相互保有 |
Research Abstract |
初年度たる平成4年度においては、わが国の上場会社における株式相互保有の実態把握、並びに会社法・独占禁止法上の問題点の整理と比較法的考察を含めて、法理論的な対応措置の検討を行ってきた。前者については、現在なお作業を進行中であるが、近時では大きな変化は見られないものの、株式相互保有がわが国の企業社会に深く浸透していることが窺える。後者については、総論的検討を終え、各論的考察を進めている。後者の総論的研究の成果の一部は、既に「日米構造協議と企業組織法の課題」(商法・保険法の現代的課題(石田満先生還暦記念論文集)84頁〜107頁・平成4年・文真堂刊)において公表した。 株式相互保有の会社法上の主要な問題点としては、従来から、資本空洞化と議決権行使(あるいは会社支配権)の歪曲化が指摘されていた。さらに法人株主化の進渉・低配当性向の定着・株式分割(無償交付)による株主への利益還元行動の反復継続とも相まって、新たに営利性構造の歪曲化という構造的問題が生じていることが認められる。また、この種の構造的問題は、企業集団内取引による利益回収への依存を生む素地を有しており、この点は、経済法上、事業者間取引の閉鎖性、不透明性の原因となるとともに、会社法上、株主平等原則への抵触問題として促える必要性も生じている。将来、国際会計基準が施行され、持合い株式の評価基準として部分的にせよ時価評価が導入されることになれば、株式相互保有への制約要因となることが予想されるが、上述の諸問題への法的な対応措置については、情報開示規制、企業行動規制、構造規制の3つの側面から検討を進めている。具体的な立法論的考察は平成5年度においてまとめる予定である。
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Research Products
(1 results)