1992 Fiscal Year Annual Research Report
内生的技術進歩と経済成長の関係についての理論的研究
Project/Area Number |
04630002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三野 和雄 東北大学, 経済学部, 教授 (00116675)
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Keywords | 経済成長 / 内生的技術進歩 / 人的資本 / 外部性 / 収穫逓増 / 成長経路の非一意性 / 技術の国際間の波及 |
Research Abstract |
本研究の主題は、内生的技術進歩と経済成長の関係を理論的に考察することにある。平成4年度は、主として、人的資本の蓄積の効果と企業間の技術の波及効果が生み出す外部的収穫逓増について研究を行なった。 1。人的資本の蓄積: 人的資本の蓄積と経済成長の関係については、すでに相当数の研究があるが、それらの大半は、経済主体の自主的な学習による人的資本の増大を仮定している。われわれは、人的資本への投資を教育産業からのサービスの購入としてとらえ、最終財部門と教育産業部門からなる2部門経済の分析を行なった。この場合、通常の2部門成長モデルと同様に、相対価格の運動が成長プロセスの決定に重要な働きをすることが明らかになった。またわれわれのモデルでは、技術に関する標準的な仮定のもとで、長期的経済成長率が内生的に決まるため、種々の経済政策が長期的経済成長に及ぼす効果を分析できる。われわれは、資本課税と貨幣成長率の変化を検討できるかたちに基本モデルを修正し、それらの財政・金融政策の効果を詳しく検討した。 2。外部的収穫逓増: 経済成長の源泉を技術の企業間の波及効果による外部的収穫逓増にもとめるという研究も既に数多く報告されている。しかし、外部性がthreshold effectsを持つ場合(社会的知識のストックがある最低限度を越えない限り、収穫逓増が生じない場合)の経済成長のパターンについては、ほとんど研究されていない。われわれは、外部効果にこのような規模の経済が働く場合に注目して議論をした。まずthreshold externalitiesを標準的な成長モデルに導入すると、成長経路の不確定性や循環的成長が生じることを明らかにした。さらに同様の考え方を、広い意味での公共資本(インフラストラクチャー)が存在する成長経済に適用し、同様の結果を得た。またそれとは別に、thresholdの存在しない通常のケースについて、上の1と同様に、財政・金融政策の効果を調べる研究も行なった。 以上の研究は、裏面にあげた論文以外にもいくつかの単著および共著の論文にまとめ、東北大学や他大学でのセミナーおよび学会で報告した。それらのいくつかは現在専門誌に投稿中であるが、近い内になんらかのかたちで公表できるようにしたい。来年度は、当初の計画に従って、企業のR&Dの効果と国際間の技術の波及の問題を中心にさらに研究を進める予定である。
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Research Products
(1 results)