1992 Fiscal Year Annual Research Report
自動車・電機産業における海外生産支援工場の役割と課題
Project/Area Number |
04630022
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
板垣 博 埼玉大学, 教養部, 教授 (20125884)
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Keywords | 海外生産 / 技術移転 / 自動車産業 / 電気産業 / 親工場 / 作業組織 / 技能形成 |
Research Abstract |
平成4年度における主な研究活動は、本研究の中心部分をなす調査対象企業の海外生産を支援する親工場と本社におけるインタビューである。具体的には、7月に東北地方の自動車と電機のそれぞれの部品工場、2月に関西に本社を持つ電気組立企業の本社インタビュー、3月に中国・九州地方の自動車組立工場を訪問し、海外工場に対する支援体制、ことに作業組織のありかたや熟練形成の面での技術移転に関するインタビューを行なった。 そこから得られた知見を列挙しておく。1.70年代から80年代にかけての海外工場の新設と拡張のラッシュが一段落したことと、海外生産の経験が一定程度蓄積されたことなどによって、親工場の支援体制も一時の混乱期を脱しより安定的なものとなりつつある。ただし、以下のそれぞれの産業ごとの事情により、親工場の役割は相変わらず重要かつ大きい。2.自動車組立は北米にまだ相当数の派遣要員が存在しており、イギリス工場を立ち上げたばかりの企業もある。3.電機や自動車の部品メーカーでは、80年代後以降の急激な円高に対応するために、内外の工場の質的強化が急務の課題となっており、セットメーカーに比べて遅れていた日本的生産管理と人材育成の手法の本格的な導入が親工場と海外工場とで若干のタイムラグを伴ないながらもほぼ同時並行的に進行しつつある。4.電機の組立と部品では、アセアン諸国への進出に際して、操業経験が長くかつ中国系のネットワークが使える台湾工場を経由して日本的技術が移転されるとも予想されたが、そうした事例は稀であり、日本からの直接支援が主となっている。ことにマレーシアは輸出基地として新鋭の量産設備が導入されており、台湾・韓国のNIES諸国よりむしろ日本との技術的連続性が強い。
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