1993 Fiscal Year Annual Research Report
自動車・電機産業における海外生産支援工場の役割と課題
Project/Area Number |
04630022
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
板垣 博 埼玉大学, 教養部, 教授 (20125884)
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Keywords | 海外生産 / 技術移転 / 自動車産業 / 電機産業 / 親工場 / 作業組織 / 技能形成 |
Research Abstract |
平成5年度も、前年度に引き続き本研究の中心部分をなす調査対象企業の海外生産を支援する親工場におけるインタビューが、主な研究活動の内容であった。具体的には、九州の半導体工場、中国・近畿・中部地方におけるカラーテレビやVTRを中心とする家電工場を訪問した。前年度が自動車組み立てと自動車部品を主な調査対象としたのに対して、今年度は半導体を含む電機産業に焦点をあてた。インタビューのポイントが、海外工場に対する支援体制、ことに作業組織のありかたや熟練形成の面での技術移転の問題である点についても前年度と同様である。 インタビューから得られた知見は以下の通りである。1.80年代にみられた世界的な規模での海外生産の急拡大は一段落したものの、中国大陸における工場の新設やアセアンにおける生産体制の拡充(新規工場の設立と既存工場の能力増強の両者を含む)のために、親工場は依然として大きな役割を果たし続けている。2.欧米の工場に比べて、アジア地域における工場への親工場からの出向者の数は相対的に少ない。これは、アジア地域においては操業経験が長くしたがって技術移転がかなりの程度進んでいる工場が少なからずあること、言葉の問題を含めて現地人経営者の日本方式に対する理解がかなり深いこと(特に韓国と台湾において)、などが大きな要因と考えられる。3.しかし、アジア地域への出張者の数と頻度が相当に高く、これが数少ない出向者を補っていることを同時に勘案せずばならず、ここにも親工場のはたす役割と負担の大きさが示されている。4.アセアンの国内市場の急拡大と輸出基地としての役割の増大により、新鋭設備や機軸部品の供給、より本格的な日本方式の導入など、親工場の支援体制も量的にだけでなく質的にもより高度なものが要求されつつある。
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