1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04630030
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Research Institution | OITA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
阿部 誠 大分大学, 経済学部, 助教授 (80159441)
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Keywords | 構造調整 / 技術革新 / グローバル戦略 / 産業空洞化 / 雇用問題 / 要員問題 / 労働組合の産業政策 |
Research Abstract |
本年度は1980年代の構造調整の下での産業の再編成とそれが国内雇用へ及ぼす影響、また構造変化の下での労務管理の特徴などについて電機産業の事例を中心に分析し、これらに対する労働組合の対応策の検討を通じて、構造変化の下での労使関係の変容を考察してきた。とくに昨年までの分析で残されていた電機企業の海外進出とその下での経営管理の変化を中心にして考察を進めた。電機産業は、貿易摩擦と円高などへの対応として1980年代以降新たに生産機能を海外へ移転するとともに経営のグローバル化を進め、国際的レベルでの企業内分業体制の構築をはかってきた。これはME化ともあいまって、日本国内での生産・分業体制の再編成を促進し、とりわけ中高年労働力の配転、削減や低賃金労働力に依存した地方工場の撤退・縮小、人員整理などをもたらした。同時に、生産部門の海外移転の一方で国内に残る管理部門や開発・設計部門などは機能強化をはかるとともに、厳しい経営環境の下でこれら間接部門の生産性を高めるために、ホワイトカラーの削減、部門・製品ごとの経営管理体制の強化や人事システムの再編、年棒制導入など能力主義管理の徹底化が進められている。こうした構造変動にたいする労働組合の対応は、基本的には産業再編を受け入れつつ、雇用や労働条件の確保をはかるという政策的方向である。しかし、今日のリストラは、一方で雇用問題をひきおこしつつ、他方で職場での要員不足、その結果としての長い残業時間や休暇取得の困難などの問題を生み出している。ところが、労働組合は要員問題を「経営権」の問題として基本的に規制できない状態にある。また賃金についても、労働組合が個別賃金化、能力主義化の方向を打ち出している。このように今日の労働問題のもっとも基本的問題で労働組合が経営側を規制できずにいることが労使関係における組合の力量を弱めるとともに、労働者の組合離れを促進しているといえよう。
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Research Products
(2 results)