1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04630036
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
青木 郁夫 阪南大学, 経済学部, 助教授 (80184026)
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Keywords | 医療利用組合 / 協同組合 / 保健医療政策 / 保健力 / 医療制度 |
Research Abstract |
本年度の研究活動においては、まず、「初期医療利用組合の諸相」のまとめをおこない、(下)論文を『阪南論集・社会科学編』第28号第2号に発表した。この論文において、豊橋-神野新田組合、大和郡山-発志院組合のそれぞれの医療事業を個別具体としてとりあげ、考察した。神野新田組合の場合は新田を経営した土地会社による住民=農民統理の方策として医療事業がおこなわれたこと、しかしそれは当時の時代状況においては「開明」的な側面があったことが明らかとなった。発志院組合の場合は産業組合自体が信用・販売・購買・利用の四種事業を旺盛に展開しており、地域社会全体の産業組合主義経済組織づくりがめざされており、医療事業もその一環に位置づけされていたこと、しかし、それは地域社会の全階層の協同化の形態をとりながらも、実質的には地主-自作上層を中核とし、かつ意思決定権を握った地域支配を意味したことが明らかとなった。さらに、これまでの個別具体分析をふまえて「初期医療利用組合の歴史段階規定をおこなった。歴史的意義として(1)医療資源配分の地理的不均等を是定する手がかりをあたえ、地域社会における経済および生活の共同化を通じて、地域社会の総合的生活能力向上の見通しをあたえた。(2)住民が医療のあり方に関与・参加する手がかりをあたえた。(3)中産階級以下の人々にも医療を享受することを可能にした。したし、その一方で限界として、(1)初期医療利用組合は小規模にすぎ、医療ニーズに対応する能力に限界があった。(2)産業組合運動がさかんな農村での事業展開であり、都市やより貧しい農村を組織するものではなかった。(3)全組合参加による地域社会の保健力発展させる活動の展開が不十分であったといえる。とはいえ、初期医療利用組合はその後の、協同組合による医療事業の展開にとって極めて重要な役割をはたした。現在、次の歴史段階についての分析、考察をすすめている。
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Research Products
(1 results)