1992 Fiscal Year Annual Research Report
中・近世出土銭貨の研究ー考古学的手法による銭貨流通史の復元ー
Project/Area Number |
04630045
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 公雄 慶応義塾大学, 文学部, 教授 (80051499)
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Keywords | ロクドウセン / ビチクセン / シュツドセンカ |
Research Abstract |
出土六道銭関係: 東京都港区天徳寺,同新宿区発昌寺,神奈川県上の山,福岡県上月隈同京町などの諸遺跡から出土した六道銭を実査,分類し,従来から作成してきた「六道銭データベース」に入力した。この結果,同データベースは全国で2164基の六道銭出土墓についてのデータを有する巨大なファイルとなった。このうちから,本年度の分析的研究としては、「念仏銭,題目銭など,特殊な銭貨を有する六道銭の抽出と,10枚以上の多数の銭貨を有する六道銭のセリエーション分析を行った。その結果の一部は、『史学』第62巻3号に『多数の銭貨を有する六道銭について』と題する論文として刊行した。 出土備蓄銭関係: 大阪府堺市内の中世遺跡の調査により,特殊な鋳型によって模鋳された渡来銭が発見され,同時にその鋳型約10種も出土した。この鋳型によって鋳造された銭貨は,他の渡来銭と容易に区別できるため,それらについて東京都北区王子本町及び京都市八条三坊出土の備蓄銭(共に約1万5千枚)を調査した。この結果,王子本町にはきわめて一般的に存在するのに対して,八条三坊の備蓄銭にはきわめて少数しか含まれていないことが判明し,この特殊な模鋳銭が16世紀にはかなり流通していた可能性が考えられるに至った。これについては平成5年度に成果を刊行する予定である。また,大分県高城観音院,熊本県長陽村出土の備蓄銭(共に約1万枚)の実査と分類を行い,出土備蓄銭の出土例数の少い九州地方の資料の充実につとめた。これらにより,出土備蓄銭のデータベースは,出土例168,出土総銭貨枚数約250万枚を持つ巨大なファイルとなった。
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