1992 Fiscal Year Annual Research Report
わが国のフリンジ・ベネフィットの実態とその課税方法に関する研究
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04630056
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
馬場 義久 長崎大学, 経済学部, 教授 (80148022)
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Keywords | フリンジ・ベネフィット / 社宅 / 最適課税ルール / 被用者便益 / 包括的所得税 / 労働力の固定化 |
Research Abstract |
上記研究課題について本年度の研究によって得られた主たる知見・成是は以下のとおりである。1.水平的公平と効率性を基準として場合のフランジ・ベネフィット(以下FBと略称)に対する最適課税ルールは、被用者の便益に完全課税し、雇用者の便益については控除することである。2.1のルールは、わが国のFB課税を検討する際に、個々のFBの特性-被用者便益創出効果と雇用者便益創出効果の相対的大きさの違い-の分析の必要性を示唆する。3.わが国の最近のFBの大半は社宅提供によるものである。しかも'88年以降社宅回帰現象がみられ、このことが法定外福利費の対前年度比14.7%増(平成2年度基準)の最大要因である。4.わが国の社宅の場合、主として被用者便益を創出するFBと捉えられ、1のルールによれば社宅便益に対する完全課税が求められる。5.しかし社宅に限らずFB課税の困難性は、税務行政上の実施可能性が、最適課税ルールの適用に重大な制約を課す点にある。被用者便益の個人帰属分の推計、推計便益の評価方法などの問題を検討しなければならない。わが国の社宅便益課税においても、帰属家賃推定という税務行政上の困難が存在する。6.わが国の社宅を典型例とするFB課税について、企業課税方式を唱える論者もいる。FBを企業が労働者を企業内に固定化する手段として捉え、労働力の固定化という不効率を解決する方策としての企業課税方式の提案である。これからの日本企業の在り方とも関連し、今後検討すべき論点である。7.なお、FB課税を求める規範的租税論の代表である包括的所得税論の基本的性格について再検討し、課税ベースを効用タームでなく実物資源タームで規定する思想的根拠を、サイモンズの政治思想に基づいて明らかにした。
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Research Products
(1 results)