1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04640334
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
千葉 明朗 京都大学, 原子エネルギー研究所, 助手 (90027144)
|
Keywords | 低係元礒性体 / 量子スピン効果 / 核磁気共鳴 |
Research Abstract |
低次元スピン系の量子効果の興味ある現象として、一次元ハイゼンベルグ反強磁性体整数スピン系の基底状態が一重項となりエネルギーギャップが出現する現象があり、近年ハルデン(Haldane)によって指摘された。 その検証のため、擬一次元S=1スピン系の磁性体の一つであるCsNiBr_3の核磁気共鳴の実験を行った。ところが、この物質は鎖間の磁気的結合が比較的大きく15K以下では三次元秩序状態が生じてしまいハルデン効果の検証には適さなかった。当初の目的は果たせなかったが、イジング性三角格子反強磁性体の興味ある特徴の遂次相転移が観測され、そのスピン構造を我々の核磁気共鳴の観測から明らかにすることができた。 一方、Ni^<2+>イオンを含んだ有機物質の一つであるNENP[Ni(C_2H_8N_2)_2NO_2(CIO_4)]は一次元性がよく、磁化率、中性子線回折、常磁性共鳴等様々な実験手段によりハルデンギャップの存在が確認されている。我々もすでにこの物質中の陽子(水素の原子核)の核磁気共鳴を15Tまでの外部磁場の下で行い、磁場の増大とともにエネルギーギャップの消失していく過程をスピンダイナミクスの観点から観測している。本研究計画は、より詳細な実験を行ってハルデンギャップの性質を明らかにすることであり、本年度はそのための実験機器整備を行った。 さらにS=1/2のスピン系においても量子効果によるスピン構造が理論家により議論され、上述のハルデン効果に劣らず興味深い。そこで、S=1/2スピン系のC_sC_uCl_3については試料を作製し、^<133>Csの核磁気共鳴の実験を試みた。外部磁場12T付近で共鳴スペクトルに異常が観測され、量子効果によると思われる磁場中スピン構造転移が反映されている。これにより、量子スピン系における新たな展望が開けることが期待される。
|
Research Products
(1 results)