1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04640334
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
千葉 明朗 京都大学, 原子エネルギー研究所, 助手 (90027144)
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Keywords | 低次元磁性体 / 量子スピン効果 / 核磁気共鳴 |
Research Abstract |
低次元スピン系の量子効果の興味ある現象の一つとして,CsCuCl_3で観測されていた強磁場磁化の跳びが,S=1/2スピン系における量子効果によるものとの指摘が理論的になされ注目を集めている。ことの発端は,CsCuCl_3の秩序状態における強磁場磁化の実験において12T付近で観測されていた磁化の跳びである。この跳びは古典スピン系のモデルでは説明がつかず,謎のままであった。理論による指摘は,これを解決するためになされ,一次元S=1/2スピン系における量子スピン揺動により,強磁場においては別のスピン構造の方が安定になることもあり得ることが示された。そのため,外部磁場が強くなってスピン構造の相転移がおこれば、磁化の跳びはこの相転移に伴うものであるとして説明できる。 以上の事情を実験的に確かめるため,申請者達は,CsCuCl_3については試料を作製し強磁場中での^<133>Csの核磁気共鳴の実験を試みた。まず,外部磁場を結晶のc-軸に平行にかけた配置においての実験を行った。12T付近の磁化の跳びに対応する磁場において共鳴スペクトルの構造が不連続に変化するのが観測された。これはまぎれもなく,スピン構造の転移によるものである。さらにこのスペクトル線の構造は理論的に予測されたスピン構造と矛盾しない。というわけで,量子スピン揺動による磁場中相転移を,核磁気共鳴の実験により直接検証することができた。外部磁場が結晶のc-軸に垂直な配置では,対称性の低下のため事情はより複雑になる。詳しい解析は目下進行中である。これが明らかになれば,量子スピン系における新たな展望が開けることが期待される。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 千葉明朗: "Anomalous Spectrum of ^<133>Cs NMR in CsCuCl_3 around the Applied Field 11 T" Journal of the Physical Society of Japan. 62. 4186-4189 (1993)
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[Publications] 千葉明朗: "NMR Study on the Quntum Spin Effect of the 1D Magnet in High Magnetic Fields" Physica B. (印刷中). (1994)