1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04640389
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小林 信夫 東京都立大学, 理学部, 教授 (30087100)
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Keywords | 高分解能イオン分光法 / 高励起状態 / 衝突・標的同時遷移 |
Research Abstract |
高分解能イオン分光装置のイオン源からのイオン引き出し、加速レンズ系を改良すると共に配線を一新し電源を更新した。さらにスペクトロメーターの自動掃引、データーの取り込みの自動化を行った。イオンレンズ系はシミュレーションプログラムSIMIONを用いて最適な電極配置を決定した。その結果、従来と同一の分解能で比較した時イオン強度を3倍に向上させることが出来た。 He^+を2.5KeVに加速してN_2,COに衝突させた場合、分解能60meVでエネルギー損失スペクトルを0-16eVの範囲で測定することが出来た。従来は測定可能領域は0-11eVであったため測定が出来なかったイオン化エネルギー付近の高励起状態の観測が可能となった。N_2分子の場合には励起エネルギー12eVから16eVの間で高励起状態への励起に伴う多数のピークが観測された。このことはこのような高いエネルギーに解離状態以外の安定状態が存在することを示しているが、現在のところこれ等のピークの同定には成功していない。 さらにH_3^+イオンを希ガス(He,Ne,Ar,Kr,Xe)に衝突させエネルギー損失、利得スペクトルを測定した。損失,利得側共に0-1eVの範囲でH_3^+の回転-振動-電子状態が結合した励起、脱励起によると思われる巾の広いスペクトルが観測された。損失,利得スペクトルの強度はほぼ等しく、H_3^+の約半分が励起状態にあることを示唆している。また、標的がAr,Kr,Xeの場合には、エネルギー損失10eV付近に巾の広いピークが観測された。これ等のピークは標的原子の励起と衝突H_3^+の励起・脱励起が同時に起る過程によるものと考えられ、高いエネルギー状態への同時遷移が初めて観測された。
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