Research Abstract |
中部地方北西部,北陸地方から飛騨地方にかけての微小地震観測の験震データを整理し,震源の再決定を行った。基本的なデータは京都大学防災研究所の,1978年から1993年まで16年分であるが,1992-1993年には飛騨山脈,跡津川断層付近,能登半島沖で地震が発生し,例年の3倍のデータが得られたので,これらを追加して震源を精密に再決定し,深さの精度を調べた。その際,臨時観測点のデータを追加し,さらに,東京大学地震研究所の信越観測所のデータも一部利用した。さらに,震源決定に使用する走時をチェックするため,当該地域で観測されている人工地震の結果を再解析し,観測点補正値を求めた。これらをもとに震源の再決定を行ったが,当該地域は観測点の密度が近畿地方北部に比べて荒いので,近畿地方ほど地震の下限を精度良く求めることはできなかった。しかし,従来の分布に比べれば,格段に精度の良い深さ分布を得ることができた。その結果,中部山岳地域と,その東側の跡津川断層付近では深さの下限が大きく異なり,中部山岳では5-8km,その東側では12-15kmであることがわかった。さらに,中部山岳地域では,焼岳火山婦き火山付近では0-3kmと浅く,北側の槍が岳付近では5-8kmとやや深くなることも分かった。これらのことは地震の下限が概略的には,地殻の熱構造に緊密に関連していることを示している。 一方,跡津川断層沿いの地震の下限は12-18kmの深さであり,断層の中央部でやや18km程度,両端では12km程度であることがわかった。さらに,地震が発生し始める深さも下限と同様な変化をし,中央部の深いところでは8km程度,両端では5km程度であることがわかり,従来のレオロジーのモデルでは簡単には説明できない。このような事例は精度の良い震源分布ではしばしば観測され,これらを総合したモデルが必要になる。
|