1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04640412
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
庄子 仁 富山大学, 理学部, 助教授 (50201562)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川田 邦夫 富山大学, 理学部, 助手 (20019003)
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Keywords | グリーンランド / ドームグリップ / 雪氷コア / 力学試験 |
Research Abstract |
グリーンランドのドームグリップ(72°35'N,37°38'W)では、1990年から深層コア掘削が開始され、1992年に氷床底部の3029m深に到達し、直径10cmの良質なコアが連続採取された。このうち777m深から2977m深までのコア試料、合計39本が富山大学雪氷学研究室に空輸され低温室内での解析研究が行なわれている。掘削現場での予備解析からは1624m深が完新世とウィスコンシン氷期の間の境界(現在から約1万1千5百年前)であることが知られている。 結晶粒径は、完新世前期から最終氷期後半へと移るのに対応して著しい減少がみられた。その後、深さが増すにつれて粒径は増加し、氷床底部付近では、直径数cmに成長した粗大結晶粒が観察されている。結晶方位分布は,C軸方位が深さとともに鉛直方向に集中して,単極大型が強まってゆくが、氷床底部付近での粒径増加と対応して、結晶方位分布も多極大型に変化しており、この深さ領域における再結晶過程の可能性が示唆されている。 ウィスコンシン氷期の氷については、いくつかの深さで(酸素安定同位体比の減少域に対応して)明瞭なクラウディー・バンドが観察され、その縞模様の間隔は、流動計算から予想される年層の厚さにほぼ等しいことが判った。しかし、氷床底部付近のクラウディー・バンドは著しく歪んでおり、過去の流動状態が単純ではなかったことが示唆される。 コア氷の一軸圧縮試験の結果については、C軸方式分布を考慮することで解釈でき、特にウィスコンシン氷期後半の氷は、人工氷に較べて約10倍軟らかいことが判った。これは、ドーム位置の微小変化に対して、正のフィードバック効果をもたらすことになり、ドーム位置の安定性を議論する時に極めて重要な知見である。
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[Publications] 庄子 仁: "南極氷床のボーリングと環境変動の解読" 月刊地球. (1993)
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[Publications] 庄子 仁: "気候変動と氷床過程" 地球環境変動とミランコヴィッチ・サイクル 安成哲三・柏谷健二編,古今書院. 25-52 (1992)