1992 Fiscal Year Annual Research Report
放射線誘起短寿命イオン対の再結合過程におけるスピンダイナミクスの磁場効果
Project/Area Number |
04640459
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
濱 義昌 早稲田大学, 理工学研究所, 教授 (40063680)
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Keywords | 蛍光検出電子スピン共鳴 / ODESR / イオン対 / 再結合発光 / スピンダイナミクス / 放射線誘起発光 / 磁場効果 |
Research Abstract |
平成4年度は、放射線照射によって弗素置換トルエンのスクアラン溶液中に生成する弗素置換トルエンアニオンの超微細結合定数を蛍光検出電子スピン共鳴(ODESR)法によって求め、その電子構造を量子化学計算により解明した。さらに、パルスX線を照射し、その後の発光を観測すると、生成イオン対による速い発光の後に遅れて、新しい発光が立ち上がることを見い出し、その発生機構を解明した。 テトラフルオロトルエンアニオンの超微細結合定数の実験値は△H(para)=5G,△F(meta)=53G,△ F(ortho)=70Gであり、ベンタフルオロトルエンアニオンのそれは△F(para)=272G,△F(meta)=110G,△ F(ortho)=55Gであった。これらラジカルアニオンの構造をINDO法によって計算すると、いずれのアニオンに対しても不対電子はπ軌道を占め、擬ヤーンテラー効果によってB1変位をしており、C‐F結合はベンゼン環平面よりテトラフルオロトルエンアニオンの場合は23度、ベンタフルオロトルエンアニオンの場合には18度変位することによって実験値と良い一致を見た。しかし、この構造においてエネルギーは極小値にならない。そこで、ab‐initio法を用いて綿密なエネルギー計算、構造最適化計算を行ったが、その結果から得られる構造では超微細結合定数の実験値を説明することは因難であった。このような大きな分子に対しては近似計算が十分に対処しきれていないためと思われる。 p‐terpheny1のスクアラン溶液のX線パルスラジオリシスにおいて観測された遅延成分は生成イオン対の再結合時に放出されるエネルギーによって新たなエキサイマー形成が起こるとして解釈することができる。この磁場効果についても検討中である。
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