1992 Fiscal Year Annual Research Report
細胞表層のイノシトールリン脂質の生理機能解明のための有機合成
Project/Area Number |
04640529
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
渡辺 裕 愛媛大学, 工学部, 助教授 (40114722)
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Keywords | イノシトール / リン脂質の合成 / リン酸化 / ホスファチジルイノシトール / GPI / グリコシル化法 |
Research Abstract |
イノシトールリン脂質類の効率的合成を達成するために、解決すべき最も重要な課題は、グリセロールを含むリン酸ジエステル残基を位置選択的に導入する手段の開発であった。そこで種々の方法論を検討した結果、ホスホニウム塩を経由する新しいリン酸化法を見いだすに至った。即ち、亜リン酸トリメチルあるいはトリベンジルにアルコールをピリジニウムヒドロブロミドパーブロミドと第三アミンの存在下に0〜42℃で反応させると対応するリン酸トリエステルが収率よく得られることが分かった。本法がポリオール類に対して位置選択的リン酸化ができることも分かり、イノシトールリン酸類やイノシトールリン脂質類の効率的合成が可能となった。比較的単純なイノシトールリン脂質として、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルイノシトール4‐リン酸、4,5‐ジリン酸の合成が達成された。さらに、細胞増殖時や癌細胞に多くみられるホスファチジルイノシトール3‐リン酸、3,4‐ジリン酸、3,4,5‐トリリン酸の合成も完成の手前に来ている。3,4,5‐トリリン酸の合成の場合には、メントキシ酢酸を光学活性源として光学活性イノトシール誘導体を得ることができた。一方、イノシトール骨格部分に糖を有するグリコシルホスファチジルイノシトールが最近多く発見されつつあり、それらの機能が注目されている。これらの合成には、グリコシド結合形成法が重要となる。そこで、これまでの当研究室での亜リン酸の化学に基づき、新しいグリコシド形成反応の開発を検討した。その結果、亜リン酸1‐グリコシルを糖供与体とし、塩化亜鉛などのルイス酸を活性化剤とする効率のよい方法を開発することが出きた。現在本法を利用して、2,6‐ジマンノシルホカファチジルイノシトールの合成を行っている。以上のように、独自の方法論を開発しこれを利用するイノシトールリン脂質類の効率的合成法の開発が可能となった。
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[Publications] YUTAKA WATANABE: "Utilization of ο-Xylylene N,N‐Diethylphosphoramidite for the Synthesis of Phosphoric Diesters" Tetrahedron Letters. 33. 1313-1316 (1992)
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[Publications] YUTAKA WATANABE: "Phosphonium Salt Methodology for the Synthesis of Phosphoric Monoesters and Diesters and its Application to Selective Phosphorylation" Tetrahedron Letters. 34. 497-500 (1993)
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[Publications] YUTAKA WATANABE: "Glycosylation Based on Phosphite Chemistry" Synlett. 115-116 (1993)