1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04640590
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
堀 浩 北海道大学, 理学部, 教授 (40000814)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 磨仁 北海道大学, 理学部, 助手 (40210687)
|
Keywords | Drosophila melanogaster / P因子 / 動く遺伝子 / 転写促進 / 転写調節因子 / housekeeping gene |
Research Abstract |
Drosophila melanogasterの動く遺伝子は、ゲノムの約10%を占め、その転移はゲノム構造、及び挿入部位周辺の遺伝子の発現に影響を与える。近年、我々は、動く遺伝子の1つP因子の挿入がG6PD遺伝子の過剰な転写を起こすことを見いだした。すでに、動く遺伝子の挿入が近傍遺伝子の過剰な転写を起こす例は少数知られているが、いずれもretrotransposonの挿入に起因しており、そのLTR内のエンハンサーが過剰発現を支配していると考えられている。一方、P因子はretrotransposonには属さず、別の機構により過剰発現が起きていると考えられる。そこで、この転写促進機構を明らかにし、このような変異が自然集団内でも普遍的に起きうるか否か、さらにhostの生存に何らかの意味(positive or negative)を持つか明らかにすることが、本研究の目的である。 今年度に明らかになった事実は、以下の通りである。1)G6PD遺伝子の転写促進には、609塩基(core P)、及び1154塩基(KP)の2種の内部欠失型P因子の挿入が必要である。2)core P内に1ケ所、KP内に2ケ所のcis-acting regionが存在し、各々のregionにはnuclear proteinが結合する。3)この2種のP因子からなるエンハンサーは、actin遺伝子の転写には影響しない。しかし、G6PD遺伝子転写開始点付近のGC-rich regionを挿入した actin遺伝子の転写は促進可能である。以上の結果から、(i)2種のP因子がタンデムに挿入した結果、因子に結合している転写調節因子の組合わせにより新しいエンハンサーが作られた。(ii)このエンハンサーは、G6PD遺伝子のGC-rich regionに結合する調節因子との相互作用を通して転写促進を行っている、というモデルが考えられた。このGC-rich regionはhousekeeping geneに特徴的な配列であり、このような過剰発現を示す変異は、自然集団内に普遍的に存在する可能性が考えられる。
|