1992 Fiscal Year Annual Research Report
多年生草本植物における生活史戦略の適応進化に関する数理的研究
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04640613
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Research Institution | Hokkaido Tokai University |
Principal Investigator |
高田 壮則 北海道東海大学, 国際文化学部, 助教授 (80206755)
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Keywords | 数理モデル / 進化生態学 / 生活史戦略 / 多年生草本 |
Research Abstract |
植物の生活史の適応戦略の研究は、Caswell(1978,1982)の先駆的研究以来、推移行列モデルを用いて何例か行われてきている。しかし、いずれの研究においても、植物に特徴的な成長の可塑性や運動能力の欠如を考慮したものではなかった。本研究では、その欠点を克服するために、成長の可塑性を表現できるモデルを用いると共に、運動能力の欠如によって引き起こされる密度依存性を表現できるモデルを開発した。さらに、生活史の適応進化を解析するために、突然変異種の侵入可能性条件を求めた。この条件を用いて、栄養繁殖率と多回繁殖性の関係について解析した。この結果は、Mathematical Bioscience誌(1992)に発表された。この論文では、(1)栄養繁殖率が高い種は多回繁殖性を強め、逆にそれが低い種は一回繁殖性に近づいていく(2)種子生産要する資源量が少ない種では、一回繁殖型にやすい、ことが見いだされた。 また、「繁殖回数の進化に与える密度効果の影響の解析」についても、既に解析が終了し、現在平成5年度内の論文発表を目標として、American Naturalist誌に投稿中である。この解析では、密度効果を受ける個体群における生活史の進化条件と密度効果を受けない個体群における生活史の進化条件とが比較されている。その結果、前者の個体群では、繁殖回数の進化は生産種子数と繁殖個体の生存率にだけ依存するのに対して、後者の個体群では、幼植物時の生存率にも依存することが示された。 さらに、繁殖回数の進化に関するこれらの内容を総説的にまとめた論文(「植物の生活と数学モデル」)が、北大出版会より刊行される著書の中に投稿され、現在印刷中である。
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[Publications] Takada,T.&Nakajima,H.: "An analysis of life history evolution in terms of the density-dependent Lefkovitch matrix model." Mathematical Biosciences.112. 155-176 (1992)
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[Publications] Takda,T.: "The mathematical analysis of life history evolution inplants." Research Institute for Mathematical Sciences,Kyoto University,Kokyuroku.