1993 Fiscal Year Annual Research Report
多年生草本植物における生活史戦略の適応進化に関する数理的研究
Project/Area Number |
04640613
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Research Institution | Hokkaido Tokai University |
Principal Investigator |
高田 壮則 北海道東海大学, 国際文化学部, 助教授 (80206755)
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Keywords | 数理モデル / 進化生態学 / 生活史戦略 / 多年生草本 |
Research Abstract |
初年度の研究に引き続き、生育段階構造と密度依存性を表現できるモデルを用いて、植物の生活史の進化および動態に関するいくつかのテーマを解析した。一つのテーマは、「密度効果と生育段階構造が繁殖回数の進化に与える影響の解析」である。解析の結果、生育段階構造は繁殖回数の進化にあまり大きい影響を与えないことがわかった。また、密度効果が強い個体群では繁殖回数の進化は生産種子数と繁殖個体の生存率にだけ依存するのに対し、密度効果の弱い個体群では幼植物時の生存率にも依存することが示された。その成果は現在Journal of Theoretical Biologyに投稿中である。もう一つのテーマは、「種子繁殖・栄養繁殖への最適分配戦略の解析」である。解析の結果、密度依存性が強い場合には、種子食の動物や実生個体を捕食する草食動物はその最適分配戦略に影響を与えないこと、幼植物段階の生存率が高い環境では栄養繁殖へのより高い投資が選択されることなどが示された。その成果は現在Evolutionに投稿中である。また、この解析結果を利用して林床植物ヤブレガサの最適分配戦略を求めたところ、栄養繁殖にだけ投資するのが最適であるとう結論が得られた。この結果は和文論文にまとめられ(「推移行列モデルを用いた生活史進化の解析」)、個体群生態学会会報に発表される予定である。他にも、上記のモデルを用いて個体群動態を解析する新たな手法が開発され、その方法を記した論文がJournal of Ecologyに投稿されている。また、植物の個体群動態を解析するためによく用いられてきた拡散方程式モデルと今回の解析で用いられている推移行列モデルの間の関係について研究され、その結果がJournal of Mathematical Biologyに発表される予定である。
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