1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04640637
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 雅啓 東京大学, 理学部, 助教授 (20093221)
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Keywords | 渓流沿い植物 / 形態進化 / 適応 / 異時性 / 葉 / 配偶体 |
Research Abstract |
1.野外調査と分子系統学的研究および形態学的観察を渓流沿い植物Tectaria lobbiiとその変異体について行ったところ、この変異体は遺伝的差異がきわめて小さく、渓流沿い植物に近縁な陸上植物にきわめて似た外部形態と内部構造を持つことが確かめられた。 2.熱帯の渓流沿い植物とそれに近縁な陸上植物計45種について葉の解剖学的研究を行った。その結果、渓流沿い植物は近縁な陸上植物に比べて、表皮細胞および葉肉細胞とそれに関連する細胞間隙が小さく、クチクラとワックスもよく発達して、この解剖上の違いが、それぞれ狭葉、広葉の葉形と強く相関することがわかった。 3.この相関した特徴の形成を明らかにするために、渓流沿い植物ヤシャゼンマイと陸上近縁種ゼンマイについて葉の形態形成を調べた。細胞増殖期では大きな違いはなかったが、細胞伸長期において顕著な差異が見られ、ヤシャゼンマイでは伸長期が短く、そのため葉の細胞と細胞間隙が小さくなることがわかった。このような変化は異時性特に幼形進化とみることができる。 4.生活史の一部をなす葉状の配偶体世代の渓流帯への適応戦略を明らかにするため、ヤシャゼンマイとゼンマイの配偶体が発生を追跡した。その結果、ヤシヤゼンマイの方が生長が早く、胞子体形成率も高かった。したがって、配偶体は世代時間を短くするという戦略をとっていると考えられる。 5.渓流帯の流水圧という淘汰圧が生活史のどの時期に強く作用するかを明らかにするために、幼植物の発生観察と野外調査を行ったところ、第5、6葉をつける段階でヤシャゼンマイとゼンマイの葉に形態上顕著な差が現われた。野外調査でも、発芽後1年未満の時期にゼンマイは渓流帯から淘汰されることがわかった。
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