1992 Fiscal Year Annual Research Report
「からし油配糖体」生成植物群の比軽発生学と系統-総括研究
Project/Area Number |
04640640
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸部 博 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (60089604)
|
Keywords | からし油配糖体 / グノコシノレート / Brexia / Canotia / Ixerba / Embryology / 発生学 / 分類学 |
Research Abstract |
1.当初研究を予定していたAcanthothamnus,Brexia,Canotiaについての研究は順調に終了した。研究の結果、この3属には「からし油配糖体」生成植物群のいづれかと系統関係があることを示唆するような比較発生学的上の共通点は観察されなかった。この3属は(1)tenuinucellate (weakly crassinucellate)、(2)小さい珠心、(3)自由核型の胚乳、(4)有胚乳種子、(5)繊維状内種皮外層、を共有し、ニシキギ科に近緑な植物であることが明らかにされた。これらの研究成果は、Bot.J.Linn.Soc.に掲載される予定である。 2.1で研究したBrexiaと近縁と考えられてきたIxerbaの研究も行った。その結果、IxerbaはBrexiaと全く異なり、その特徴はBrexiaよりもはるかに原始的なものが多く、バラ科やユキノシタ科などとの類似がみられるため、もう少し文献を検討してから、結論を出す予定である。 3.Pentadiplandraの研究材料はどうしても入手出来なかったため、今年度は研究することが出来なかった。 4.最近分子系統学的研究成果によって、メキシコの乾燥地から知られていたSetchellanthusが「からし油配糖体」生成植物群と、特にフウチョウソウ科(目)と近縁であることが推定されている。研究材料はまだ十分ではないが、比較発生学の研究によれば、Setchellanthusはフウチョウソウ科とは全くにていない。一方で、分子系統学からは「からし油配糖体」生成植物群が一部を除いて、単系統群であることが強く示唆されている。 従って、「からし油配糖体」生成能力は、植物進化のかなり早い時期に獲得され、その後、比較発生学即ち生殖器官の形態進化が進んだものと推定される。今後の研究では、そうした形態進化がどんな植物にどのように起こってきたのか整理する必要がある。
|
-
[Publications] Tobe,H.and P.H.Raven: "Embryology of Acanthothamnus,Brexia,and Canotia:a comarison" The Botanical Journal of Linnean Society. (1993)