1994 Fiscal Year Annual Research Report
カイコのインスリン様ペプチド(ボンビキシン)の生理的機能に関する研究
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04640655
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
溝口 明 名古屋大学, 理学部, 助教授 (60183109)
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Keywords | カイコ / インスリン様ペプチド / ボンビキシン / 分泌動態 / 時間分解蛍光免疫測定法 / 糖代謝 / 脂質代謝 / トレハラーゼ |
Research Abstract |
1.昨年度までに,ボンビキシンにはカイコの主要血糖であるトレハロースの血中濃度を低下させる作用および中腸のトレハロース分解酵素(トレハラーゼ)の活性を上昇させる作用があることを示した。今年度は,ボンビキシンの糖代謝調節機能の研究を更に進め,以下の点を明らかにした. 1)ボンビキシンのトレハラーゼ活性上昇作用は筋肉を含む外皮でもあるが脂肪体では認められない. 2)ボンビキシンは中腸および脂肪体のグリコーゲン量を有意に変化させることはない. 3)ボンビキシンは脂肪体のトレハロース合成酵素の活性に影響を及ぼさない. このように,ボンビキシンは特定の組織における血中トレハロースのグルコースへの分解と組織への取り組みを促進するが,生成したグルコースはグリコーゲンとして貯蔵されることはない.よって,ボンビキシンの生理機能は,炭水化物の同化促進ではなく,エネルギー代謝の促進にあることが示唆される.また,外皮においては生成したグルコースはクチクラ形成に利用される可能性もある. 2.ボンビキシンの血中濃度は,カイコの羽化後,オス特異的に急上昇することが昨年度示した.その生理的意味を探る目的で実験を行ない,以下の結果を得た. 1)羽化後の血中ボンビキシン濃度の経時的変化を詳細に調べたところ,羽化1時間後には既に上昇が認められ,羽化後3時間で最大値(約3ng/ml)に達し,以後少なくとも3時間は高レベルで維持されることが明かになった。メスや頭胸間で結さつしたオスではボンビキシン濃度の上昇は認められなかった. 2)同時に,血中トレハロース濃度と脂質濃度の変化を調べたところ,トレハロースには雌雄差や頭胸間結さつの影響はなかったが,脂質についてはオス特異的な上昇が認められ,この上昇は頭胸間結さつにより抑制された. 以上の結果は,ボンビキシンが成虫の脂質代謝調節に関与する可能性を強く示唆した.
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 三枝 弘尚: "Changes in the titer of bombyxin-immunoreactive material in hemolymph during the-postembryonic development of the silkmoth Bombyx mori." Development Growth and Differentiation. 34. 595-605 (1992)
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[Publications] Ji-da Dai: "Immunoreactivity of neurosecretory granules in the brain-retrocerebral complex of Manduca sexta to heterologous antibodies against Bombyx prothoracicotropic hormone and bombyxin." InvertebrateReproduction and Development. 26. 187-196 (1994)
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[Publications] 溝口 明 (分担): "Perspectives in Comparative Endocrinology(K.G.Davey 他編)" National Research Council of Canada, 654,(5) (1994)
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[Publications] 溝口 明 (分担): "昆虫の生化学・分子生物学(大西英爾 他編)" 名古屋大学出版会 (印刷中), (1995)