1993 Fiscal Year Annual Research Report
分子超伝導体薄膜の電気化学的作製と評価に関する研究
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04650004
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Research Institution | YAMAGATA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
粟野 宏 山形大学, 工学部, 助手 (20202773)
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Keywords | 分子結晶 / 超伝導体 / 薄膜 / 電気化学 / 電析 / イオンラジカル塩 |
Research Abstract |
本研究は,κ-(BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2塩に代表される分子超伝導体の薄膜を電気化学的な方法により得ることを目的とする,そのための基礎的な知見として,いくつかのイオンラジカル塩の電析機構を明らかにする. 前年度に引き続き,(BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2塩の電析とその条件について調べた. また,(BEDT-TTF)_2CU(NCS)_2塩の電析における結晶核生成・成長の過程を明らかにするため,in situの顕微鏡像を観察し,VTRで録画した.光学的な観察のため,電着には通常の不均一な懸濁液のかわりに,均一な溶液(BEDT-TTF-CuSCN-KSCN-18-crown-6-1,1,2-トリクロロエタン(TCE))を用いた.電極はITOとし,既報のin situ観察用セルを用いた.まず電解系を検討したところ,BEDT-TTFおよびそのラジカル塩の溶解度のバランスからみて,溶媒はTCEが適切であることがわかった.銀参照電極に対し3.0Vを10秒間印加したのちに,1.5Vを印加した場合のin situ顕微鏡画像をみると,顕微鏡の分解能以下の小さな核が無数に生成し(1×1μm^2に1〜2個以上),数分以内にそれらが成長をはじめ,周囲の比較的小さな核を取り込みながら成長を続けることがわかる. (BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2以外の塩として,ヒドロキノンとp-ベソゾキノンの電荷移動塩キンヒドロンの結晶をはじめて電析により得ることができた.ヒドロキノンを水溶液から電解酸化することによりキンヒドロンを結晶化し,in situ吸収スペクトルによりキンヒドロンの生成過程を明らかにした.また,C_<60>アニオンラジカル塩の電析も試みたが,膜の生成にはいたっていない.
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