1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04650022
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
中澤 叡一郎 工学院大学, 工学部・電子工学学科, 教授 (60227767)
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Keywords | 冷陰極 / 電子放射 / 薄膜 |
Research Abstract |
本研究は、課題担当者らが提案している誘電体薄膜を用いる交流冷陰型電子放射素子について、その動作機構の解明、放射効率の改善、これまでに動作が確認されている硫化物結晶以外の薄膜材料の探索などの研究の一環である。 2年目(最終年度)に当たる本年度の具体目的は、平成4年度に製作した電子ビーム蒸着装置を用いて放射素子を試作し、その動作機構や材料による特性の違い等を明らかにすることであった。結論としては、十二分にその目標を達成することが出来たといえる。 試作した交流型薄膜電子放出素子は、硫化物、セレン化物、酸化物、ポリイミドLB膜等の種々の誘電体膜を電子加速層とし、これと絶縁層との積層膜を上下の電極で挟んだ構造である。これら試作素子について真空中への放出電子電流や1サイクル毎に素子内を移動する電荷量などを測定し、その動作特性を調べた。 その結果は、ZnS、ZnSeを用いた素子では、印加電圧が加速層の電子雪崩電圧を越えると移動電荷量の急激な増加と電子放射が起こることが確認された。また、ポリイミドLB膜を電子加速層に用いた素子でも同様の動作が認められたが、効率はかなり低い。酸化物(Al2O3、Y2O3)を電子加速層とする素子は、先の3つとは違った特性を示した。すなわち印加電圧に対する移動電荷の増加はなだらかであり、雪崩電圧のようなものは認められず、電子放出も比較的低い電圧で起こる。また、放出電流が高周波で減少することも他の材料とは逆であり、これらの結果は、時間応答が遅く閾値電圧を持たない吸収電流が電子放射に関与していることを示唆している。 以上の結果は、応用物理学会とうの学術講演会や論文誌に報告すべく準備中である。
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