1992 Fiscal Year Annual Research Report
高速酸素イオンによる宇宙飛翔体表面材料の劣化の研究
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04650060
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Research Institution | Institute of Space and Astronautical Science |
Principal Investigator |
佐々木 進 宇宙科学研究所, 衛星応用工学研究系, 助教授 (00092221)
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Keywords | 宇宙材料 / 材料劣化 / 酸素イオンビーム / アルミ蒸着ポリイミド / 高電圧衛星 / 太陽発電衛星 / 二次イオン / 質量欠損 |
Research Abstract |
既存の蒸着用イオンビーム発生装置の電源部分を改修(コンデンサーの付加)して、本実験で必要なエネルギーのそろったイオンビーム発生装置(1.5kV,30mA)として整備した。この結果ビームエネルギーの変動は1%以下となった。本装置で発生させた高速酸素イオンビームを、代表的な宇宙飛翔体表面材料であるポリイミド、アルミ蒸着ポリイミドのフィルム材に照射し、表面の劣化速度、二次的に発生するイオン・原子の種類、及び試料の温度上昇を計測した。ビームのエネルギーは200eV-1200eVまで変化させて実験を行なった。劣化速度は、半導体レーザーダイオードの光の透過率計測から、実時間で算出する方法を開発した。二次的に発生するイオン、原子はイオン質量分析器、ガス質量分析器で計測した。これらの実験の結果、酸素イオンによるアルミ蒸着膜及びポリイミドの劣化速度が定量的に得られた。今回実験したエネルギー領域では、ビームのエネルギーが大きくなるほど、劣化速度(欠損速度)が大きくなった。酸素イオンのエネルギーが1000eV付近では、1ヶのイオン衝撃に対し0.4-0.8ヶのアルミ原子が失われる。この結果を高度1000kmの高電圧を露出した衛星(太陽発電衛星など)に適用した場合の解析を行ない、年間数ミクロン程度の欠損が発生することが予測できたまたこの結果を基に、放出されるガス及びイオンによって飛翔体表面近くに形成される二次的なプラズマ雲の密度評価、およびプラズマ雲内で励起される電磁現象の解析も行なった。これらの結果は、本年度の地球電磁気・地球惑星圏学会、宇宙科学技術連合講演会、ISTS(International Symposium on Space Technology and Science)、で報告するとともに、修士論文1遍、卒業研究論文1遍としてまとめられた。
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