1992 Fiscal Year Annual Research Report
交流緩和型熱重量法(AC-TG)の開発と不定比酸化物への応用
Project/Area Number |
04650616
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
山口 周 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (10182437)
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Keywords | 交流緩和 / 不定比酸化物 / 熱重量法 / 伝達関数 / 物質移動 / 拡散係数 / 表面反応 |
Research Abstract |
本研究では,本研究者らが開発してきたコンスタント・ストイキオメトリー熱重量(CS-TG)法測定装置を改造し,交流緩和を利用して物質移動の速さを測る交流緩和型熱重量(AC-TG)スペクトロスコピー法測定装置を設計・試作し,高温超伝導酸化物系の一種であるErBa_2Cu_3O_<7-x>及びYBa_2Cu_3O_<7-x>を測定対象とした性能評価を行なった. 装置の構成は,(1)通常の熱天秤部,(2)マスフローコントローラーを用いた雰囲気制御部,(3)計測器・制御用コンピュータ,および(4)伝達関数を測定するための周波数特性分析装置から構成されている. 与える交流刺激として(a)温度(熱),(b)酸素の化学ポテンシャル(酸素分圧)の微少な変化の2つの方法について試みた.前者の測定では,種々の試作の結果Pt-10%Rhの2重ヒータによる間接加熱法を用い,外側ヒータには一定電力で加熱しながら内側に約5〜30Wの振幅の正弦波加熱電力を加え,約1〜10℃の温度の交流変化を試料に加えて伝達関数の周波数依存性を調べた.後者ではマスフローコントローラに正弦波入力を重畳して酸素ガスの相対濃度変化1〜10%の条件で測定を行なった.その結果,(b)では熱天秤内の試料近傍で酸素濃度波形が崩れやすく比較的遅い緩和現象についてのみ有効であり,(a)が本測定に適しているとの知見が得られた.また,約600〜950℃の温度範囲での気相中の酸素ガスと銅酸化物不定比化合物との表面反応,固体内の物質移動を測定する本測定では測定可能な周波数範囲は10〜100Hz以下であること,今回製作した装置の制御系,および測定系の位相遅れは問題とならないことが,基礎特性測定から明らかになった. 本研究によって,AC-TG法が原理的に測定可能であることが明らかになったが,今後様々な系の測定を通して,複素表現される伝達関数の解析法について検討する必要がある.
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