1993 Fiscal Year Annual Research Report
分子動力学法による金属の結晶核生成シミュレーション
Project/Area Number |
04650622
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大笹 憲一 北海道大学, 工学部, 助教授 (90111153)
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Keywords | 分子動力学法 / シミュレーション / 核生成 / 鉄 / 凝固 / 動径分布関数 |
Research Abstract |
本研究では、鉄の融液からの核生成過程の分子動力学シミュレーション法の開発を行った。得られた結果を要約して以下に示す。 1.立法形の基本セルと周期境界条件のもとで動作する、分子動力学法の基本プログラムを開発した。本プログラムは、パソコン、ワークステーション、スーパーコンピュータ上で実行が可能で、原子の挙動を3次元ワイヤーフレームモデルでディスプレイ上に表示できる。 2.鉄の融点近傍の性質を再現できる原子間ポテンシャルモデルの検討を行った。最初に、常温でのα鉄の諸性質を再現するように経験的に決定された2体間ポテンシャルを用いて、溶解過程の分子動力学シミュレーションを行った。しかし、3000Kを越えた高温でも結晶構造を保ち、溶解現象をシミュレートすることができなかった。そこで、鉄の融点(1809K)を再現するように試行錯誤法により、鉄の融点近傍のポテンシャルを新たに決定した。このポテンシャルを用いて、鉄の融点より200K上の2000Kで、液体の平衡状態を達成した後に動径分布関数を求め、実験値との比較を行った。その結果、動径分布関数の各ピークの位置を再現することができた。 3.2000Kの液体状態から過冷度300〜400Kの温度に急冷しその後50000ステップ(435psに相当)保持して過冷却液体から結晶化が生じるかどうか観察した。その結果を以下に示す。 (1)結晶化と共に潜熱が発生することを確認した。 (2)シミュレーションを実行できた経過時間内で結晶化が進行するのを確認できたのは、過冷度が350K以上で、この結果は従来の均質核生成に関しての報告と対応する。 (3)過冷度と結晶化速度との関係を調査した。その結果、過冷度が増大すると共に結晶化速度が増大するのを観察できた。
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