1992 Fiscal Year Annual Research Report
強誘電高分子を基盤とする新規な非線形光学材料の開発と波長変換素子への応用
Project/Area Number |
04650810
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
堤 直人 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助教授 (50172036)
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Keywords | 強誘電ポリマー / β-結晶双極子 / 内部電場 / 非対称中心 / 非線形光学色素 / 第2次高調波発振 / キュリー転移点 / 分極分布 |
Research Abstract |
本年度は、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンと共重合体(P(VDF-TrFE))とPMMAとのブレンドおよびP(VDF-TrFE)と新規に合成したペンダントNLO色素含有メチルメタクリレート(MMA)コポリマーとのブレンドに関して、色素のエレクトロクロミック性を利用した内部電場評価、サーマルパルス法による分極分布の測定、およびSHGの非線形光学特性を検討した。アミノニトロアゾベンゼン系のNLOの色素をペンダント基とするMMAコポリマーを合成して、新規なNLO色素含有MMAコポリマー(P(MMA-co-MMA-DR1))とした。P(VDF-TrFE)/PMMA及びP(VDF-TrFE)/P(MMA-co-MMA-DR1)ブレンドはβ-結晶相が存在するにもかかわらず紫外・可視・近赤外領域で光の散乱はほとんどなく透明であり、SHG材料としてそのポテンシャルは高いことが判明した。P(VDF-TrFE)/PMMA及びP(VDF-TrFE)/P(MMA-co-MMA-DR1)において、P(VDF-TrFe)が60wt%以上のサンプルでは105゚Cにキュリー転移点が明瞭に現れた。P(VDF-TrFE)含有量が100、90、80wt%のP(VDF-TrFE)/PMMAでは、3.2、3.2、2.2MV/cmの内部電場が得られ、これらの値はX線回折の(110)(200)反射ピークから求めた微結晶サイズ55、50、35A^^゚にそれぞれ対応した。分極分布は均一であり、空間電荷などの存在は認められなかった。内部電場はキュリー転移点までほとんど変化せず安定であった。P(VDF-TrFE)及び(90/10)P(VDF-TrFE)/PMMAでは、SHG係数d33はそれぞれ3.3×10^<-9>及び2.3×10^<-9>esuであった。これらのd33はキュリー転移点近傍までほとんど変化しなかった。P(MMA-co-MMA-DR1)のみのサンプルでは結晶双極子の配向に基づく内部電場が存在しないので、ガラス転移点(Tg=110゚C)以下の温度領域でも分子緩和のためにd33は減少していき、Tg近傍でSHG活性はほとんど失われた。それに対してP(VDF-TrFE)/P(MMA-co-MMA-DR1)では、内部電場によってNLO色素の非対称中心配向が保たれており、Tgが38゚Cにもかかわらず、d33はキュリー転移点近傍まで安定であった。 以上のように、強誘電ポリマーのβ-結晶双極子の配向によって形成される内部電場はNLO色素を安定に配向制御できることが判明した。
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