1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04660012
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
幸田 泰則 北海道大学, 農学部, 助教授 (20002355)
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Keywords | ジャスモン酸 / 細胞肥大 / バレイショ |
Research Abstract |
バレイショ塊茎から円盤状組織片を切り出し、JAを含む培地上で培養すると、組織片は培養開始1日目以降から急激に肥大を始めた。JAを3×10^<-5>M施与した場合、培養開始5日後には組織片の生重増加量は対照区のそれの約3倍に達した。光学顕微鏡用の切片を作成し観察した結果、生重の増加は細胞分裂によるものではなく、細胞の肥大によることが判明した。肥大した細胞は培地に接した下層に極在していた。10^<-5>M以上の濃度でJAはこの細胞肥大促進作用を示した。 JAよりも揮発生が高いJA-Meを入れた小瓶を培地に立てて、組織片を培養した場合も細胞の肥大が観察されたことから、空気中を伝播したJA-Meにも細胞肥大を引き起こす能力があることが判明した。この場合も、肥大細胞は下層に極在していたことから、水分の得易さが肥大細胞の極在の原因と考えられる。 様々な植物ホルモン{インドール酢酸(IAA),ジベレリン酸(GA_3),アブシジン酸(ABA),ベンチルアデニン(BA)}及びエチレンの前駆体であるACCは、細胞の肥大に対して明かな作用は示さなかった。この結果は細胞の肥大促進活性はJAとJA-Meに特異的なものであることを示している。ABAは10^<-5>M以上で、BAは10^<-4>Mの濃度で、JAによる細胞の肥大を著しく阻害した。 JAによる細胞肥大時には、細胞内のショ糖の大幅な増加とデンプンの減少が認められた。またセルロースの著しい増加とヘミセルロース及びペクチンのわずかな増加が生じることが判明した。セルロース合成阻害剤や、微小管重合阻害剤はJAによる細胞肥大を完全に阻害した。これらの結果は、JAによる細胞の肥大には、細胞内浸透圧の増加と細胞壁の構成成分の変動、特にセルロースの新生が必要であることを示唆している。 JA及びJA-Meのバレイショ塊茎細胞肥大促進作用は、これらの物質のバレイショ塊茎形成活性と密接に関連しているものと思われる。
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[Publications] Yasunori Koda: "Involvement of jasmonic acid and related compounds in tuberization of Jerusalem artichoke plants(Helianthus tuberosus L.)" Japanese Journal of Crop Science. 53(印刷中). (1994)
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[Publications] 幸田泰則: "植物の内生形態制御物質に関する化学的研究" 植物の化学調節. 29. 8-22 (1993)