1994 Fiscal Year Annual Research Report
黎明期における近代造園・園芸に関する情報とその受容
Project/Area Number |
04660029
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
丸山 宏 京都大学, 農学部, 助手 (30157416)
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Keywords | 園芸 / 園芸書 / 園芸雑誌 / 伊藤文庫 / 岡文庫 / 菊池文庫 / 日本園芸会雑誌 |
Research Abstract |
本年度は前年度に引き続き各地の図書館所蔵の文庫を中心にその江戸期・明治期の出版された園芸書の所蔵の確認、実見に重点を置いて調査した。 図書館としては初年度から継続している国会図書館の伊藤文庫、白井文庫、東京都立中央図書館の加賀文庫、名古屋市立蓬左文庫において追加調査を行った。調査の過程で加賀文庫蔵の『藩籬譜』は前年度報告した江戸期の垣根の図譜である蓬左文庫蔵の同名の『藩籬譜』の写しであることが確認できるなど文庫間の比較検討が今後の研究にとって不可欠であることが痛感された。また現在、文庫目録が作成されていない京都大学附属図書館蔵の菊池文庫について詳細な調査を行った。菊池文庫は農学科の初代教授であった菊池秋雄の旧蔵書で、昭和30年3月附属図書館に寄贈されている。その数は450余点にのぼる。このうち園芸関係書(造園関係を含む)は220点ほどを数える。蔵書印を検討すると菊池文庫には旧伊藤文庫、旧岡文庫等の図書が多数含まれていた。伊藤文庫とは伊藤篤太郎のことでその大半は国会図書館の伊藤文庫にある。また、岡文庫とは狩野派の日本画家であり、園芸家としても高名であった岡不崩(吉壽)の旧蔵書である。岡不崩は明治33年にはじまる朝顔同好会雑誌である『〓久会雑誌』にその原画の作者としてたびたび登場する人物である。その他、菊池文庫には松村文庫(松村任三)、島津文庫、宍戸氏文庫、白井氏蔵書、村野蔵書(村野時哉)等の蔵書印が見られ、菊池文庫の書誌的な分析の必要性も痛感される。 また、情報と受容という点ではその一例として朝顔雑誌について前年度論文にしたが、雑誌というメディアがはたした役割は多大であった。とくに明治22年創刊の『日本園芸会雑誌』を明治末年まで前年からの継続調査として概覧したが、近代造園・園芸についての各分野にわたる情報の広がりは特筆に値する。
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