1993 Fiscal Year Annual Research Report
温帯果樹と熱帯果樹における光合成によるエネルギー獲得反応の比較研究
Project/Area Number |
04660030
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
宇都宮 直樹 近畿大学, 農学部, 教授 (60026622)
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Keywords | 光合成速度 / 熱帯果樹 / 温帯果樹 / クロロフィル / アントシアニン |
Research Abstract |
本年度の研究では、秋季から冬季にかけての温帯果樹(リンゴ)と熱帯果樹(グアバ、マンゴー、ストロベリーグアバ、バンレイシ、トゲバンレイシ)における光合成速度を比較した。その結果、次のようなことが明らかになった。 1.リンゴでは、気温が低下して葉にわずかでもアントシアニンが形成されると、光合成が急激に減少した。やがて離層が形成されて落葉したが、それまではこれらの果樹類の中では光合成がもっとも盛んであった。 2.熱帯果樹類におけるこの時期の光合成速度は、グアバ>マンゴー>ストロベリーグアバ>バンレイシ、トゲバンレイシの順序であった。このうちバンレイシとトゲバンレイシにおいては葉からクロロフィルが消失したために光合成が極端に低下した。一方、マンゴーとストロベリーグアバにおいては低温になっても葉には多くのクロロフィルが含まれ、このことが光合成の低下を抑制していると思われた。 3.グアバではリンゴと同様に葉にアントシアニンが形成された。その含量はリンゴにおけるよりも多くなったが、光合成は余り低下しなかった。このような葉でもまだ多くのクロロフィルが含まれており、このために光合成が維持されたと思われた。グアバではアントシアニンを発現することによって葉での耐寒性を高め、光合成を遅くまで行わせるような機構が働いているのかもしれない。 以上の結果から、温帯果樹と熱帯果樹において気温の低下に伴う光合成の変化を比較すると、温帯果樹ではアントシアニンなどが形成されるまでは盛んに光合成を行なうが、いづれは離層が形成されて落葉をする。熱帯果樹では低温になっても落葉はしなかったが、葉における反応はクロロフィルを保つもの、アントシアニンを形成してクロロフィルを保護しようとするもの、クロロフィルが容易に分解されるものとに分かれた。
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