1994 Fiscal Year Annual Research Report
果実生産に関する研究のための栽培品種とその野生種との比較研究
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04660031
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
古川 良茂 京都大学, 農学部, 助教授 (60026614)
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Keywords | 果実生産 / 野生梨 / ニホンヤマナシ |
Research Abstract |
今年度は主として成熟期の果実形質の比較を行った。果肉細胞の大きさを見ると野生梨と栽培梨の二十世紀との間にはまったく差がなっかたが、栽培梨の中の大果系の愛宕との間には差があり、あきらかに愛宕の方が大きかった。一方、果肉の厚さについては愛宕や二十世紀と野生梨との差は大きく、とくに大果系の愛宕は著しく、このことから明らかに細胞数も多いことが分かる。したがって、野生梨と栽培梨の果実の肥大機構の差は、主として細胞数の多少によるようであるが、栽培梨の大果系の果実においては細胞の大きさ、肥大能力にもかなりの差があるものと思われる。しかしいずれの場合においても、調査した野生梨と栽培梨の生育環境が全く異なること、とくに栽培梨は果実肥大に好適な条件が備わった環境で育てられていることを考慮しなければならない。また、可溶性固形物含量(Brix)を調査した結果、野生梨の多くのものが栽培梨に比べて低い可溶性固形物含量を示している。しかし、なかには13.9%と非常に高い値を示すものもあった。採集地14地点のうち5地点のものが11%以上の値を示し栽培梨として通用する可溶性固形物含量であった。一般に、野生梨の果実は小さくて堅く、果汁の量も少ないものも多かった。このために可溶性固形物含量を測定するための果汁の採集が困難なものもしばしばあった。今回の野生梨の収穫に当たっては必ずしも最適時に収穫したものではなく、早い時期に収穫したものもあり、収穫時期を正確に把握し適期に収穫すればもっと高い可溶性固形物含量を示すものもかなりあるものと思われる。また、野生梨の果実の諸形質(1果重、縦径、横径、糖度)の変異は、いずれの形質も大きな変異を示した。1果重ではほとんどの果実が100g以下でその平均値は66.4グラムであったが、最小値と最大値の間には2倍以上の開きがあった。果実の形を縦径横径の比で見るとやや縦長で、栽培種に比べて果実肥大後期の発育がよくないようである。また、可溶性固形物含量では平均値が12.4%と高く、栽培梨として十分利用できる高さであったが、この他の形質とともにその変異は大きかった。最高値としては15.0%付近の個体が4個認められた。 大鹿村の野生梨は果実の肥大や糖度(可溶性固形物含量)含量などの栽培梨に取って重要な要素に関して変異に富んでいる。したがって、野生梨の持っているこれらの形質が、栽培条件下に置かれたときにどのようにその発現が変化するかを調べることは、野生梨と栽培梨の違い、機構の違い、を知る上で重要なことと思われる。また、それらの機構の理解を通して本研究の所期の目的が達成されるものと期待される。
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