1992 Fiscal Year Annual Research Report
フィルム培養容器を用いたユリ培養球根の新生産システムの開発
Project/Area Number |
04660035
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
田中 道男 香川大学, 農学部, 教授 (10115975)
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Keywords | マイクロプロパゲーション / フィルム培養容器 / テッポウユリ |
Research Abstract |
本研究は、フッ素樹脂フィルムで作製した封筒型培養容器'Culture Bag'(CB)をテッポウユリの子球生産に適用し、低コストで効率的な新しいマイクロプロパゲーションシステムを開発するために計画された。MS寒天培地(4.5%ショ糖)で増殖された無菌子球からりん片を分離し、このりん片を小型CB(90×40mm,液体培地12ml)あたり3枚植え付け、開口部を熱接着して密封した。 まず、種々の厚さのPFAおよびFEPフィルムで作製した小型CB内のりん片からの子球形成を、フラスコ(FL;寒天培地36ml,9りん片)のそれと比較した。なお、培地は1/2MS培地(4.5%ショ糖)とし、25℃明所で90日間培養した。その結果、フィルムの厚さにかかわらず、いずれのCBでも、従来法のFLに比べ著しく大きな子球が得られた。また、種苗会社の球根生産現場で、順化時の調整に手間がかかるため不要器官と呼ばれている子球の葉身部が、FLに比べCBで極端に短くなった。この場合、薄いフィルムのCBほど、またFEPに比べPFAフィルムのCBで、それぞれ葉身数が減少し、りん片が密着したより正常な子球が得られた。しかし、暗所では、子球形成能が著しく低下した。MS培地でも同様の結果が得られたが、1/2MS培地に比べ、子球重は著しく増大した。 以上のように、りん片培養による子球形成において小型CBの有用性が明らかとなった。そこで、この子球生産システムを実際の種苗生産に用いることを前堤にして、小型CBを9倍にスケールアップした大型CB(270×120mm,培地量108ml,27りん片植え付け)を試作し、りん片培養を行った。その結果、小型CBと同様に大型CBにおいても、従来法に比べ、葉身部が短く、根長、根重とも有意に減少した大きな子球が得られることが示された。 以上の結果、種々の利点をもつCBは、テッポウユリの子球生産にも優れた実用性をもつことがわかった。実用的には50μmPFAフィルムがCBの素材として推奨される。
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