1993 Fiscal Year Annual Research Report
寄生バチによる寄主生体防御反応の制御システムの解析
Project/Area Number |
04660046
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 利治 名古屋大学, 農学部, 助教授 (30227152)
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Keywords | 寄主制御 / ポリドナウィルス / 毒液 / 包囲作用 / 生体防御反応 |
Research Abstract |
寄生された寄主では、注入された異物(Sephadex粒子)に対する包囲作用でつくられる血球層の厚さが、寄生後の日数が経過するに従って薄くなることが前年度までの血球でわかった。この原因としては、異物認識に関与する血球数が減少するか又は異物認識能が低下することによって引き起こされていると考えられる。まず、血球数を寄生後の日数経過に従ってcountしたところ、1日後で1/4から1/5にまで減少、その後ほとんど変化せず、寄生バチの幼虫が脱出してくる寄生後10日目まで少ない血球数の状態が続いた。寄生後すぐに血球数が減少する原因としては、寄生時に母バチが卵と同時に注入するポリドナウイルスと毒液が考えられる。そこでポリドナウイルスと毒液を人工的に注入したところ、注入後約1時間以内で約1/2まで血球数が減少していた。これらのことから、寄生後すぐにポリドナウイルスと毒液の働きによって血球数をかなり減少させ、寄主の異物認識能を低下させていることがわかってきた。さらに、ガラス面に付着する血球数を寄生と未寄生寄主とで比較することで異物認識能を保持している血球に変化があるかどうかを検討したところ、寄生後の日数経過と共にかなりの減少がみられた。in vitro系を用いた場合は、Sephadex粒子のみと比べてSephadex粒子を毒液でコートしたものの場合はencapsulationされにくかったが、かなりデータにばらつきがみられ確実な結果を得ることができなかった。今後は、血液の液体成分までも含めて検討を加える必要がある。さらに、血球をパーコールグラジエントを使って分画したところ、寄生された寄主の場合、寄生後の日数が経つにつれて顆粒細胞分画がほとんど消失していった。これらのことから、寄生された寄主においてはまず血球数を減少させ、さらに、異物認識に関与する顆粒細胞の数を減少させていることが明らかになってきた。
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