1992 Fiscal Year Annual Research Report
ステロイドホルモン・トランスポーターP-糖蛋白質の機能解析
Project/Area Number |
04660085
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植田 和光 京都大学, 農学部, 助手 (10151789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 みどり 京都大学, 医学部, 助手 (70228766)
谷川原 祐介 京都大学, 医学部, 講師 (30179832)
木岡 紀幸 京都大学, 農学部, 助手 (90234179)
駒野 徹 京都大学, 農学部, 教授 (30026413)
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Keywords | P-糖蛋白質 / 分子生物学 / 物質輸送 / MDR1遺伝子 / ステロイドホルモン / 癌 / ジゴキシン / 多剤耐性 |
Research Abstract |
P-糖蛋白質は、癌の多剤耐性に深く関与している膜輸送蛋白質であり、抗癌剤をATPの加水分解に依存して細胞外へ排出する。P-糖蛋白質は、正常組織、特に副腎皮質および妊娠時の胎盤において強く発現しており、これらの器官ではステロイドホルモンの輸送などの生理的役割を持つと考えられてきた。しかし、ステロイドホルモンは脂溶性が強すぎるため、従来の膜輸送実験ではP-糖蛋白質によって輸送されるかどうか明確でなかった。そこで脂溶性物質の輸送を測定できる実験系を確立する目的で、ヒト正常副腎から単離したMDR1cDNAをブタ腎臓由来培養細胞LLC-PK_1中に導入し、経細胞輸送系を確立した。 ステロイドホルモン輸送を検討した結果、副腎皮質ホルモンのコルチゾール、アルドステロンおよび人工ステロイドであるデキサメサゾンの基底膜側から頂側膜側への移動量が増大し、頂側膜側から基底膜側への移動量が減少した。この結果は、これらステロイドがP-糖蛋白質によって輸送されることを意味している。ところがP-糖蛋白質に強く結合することがわかっている黄体ホルモンのプロゲステロンは輸送されなかった。コルチゾール、アルドステロン、デキサメサゾンの輸送はP‐糖蛋白質に対する競合阻害剤であるベラパミルによって阻害された。さらにP-糖蛋白質によるコルチゾール輸送がプロゲステロンによって阻害されることも明らかになった。 以上の結果は、P-糖蛋白質が副腎において生理作用としてコルチゾールなどのステロイドホルモンの分泌に関与していること、プロゲステロンはP‐糖蛋白質の機能を調節している可能性が示唆された。さらに、ステロイド骨格をもった強心配糖体ジゴキシンの腎尿細管分泌がP-糖蛋白質を介していること、臨床上問題となるキニジン、ベラパミル併用時のジゴキシン腎クリアランス低下が、腎近位尿細管におけるP-糖蛋白質の阻害に起因することが示唆された。
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Research Products
(10 results)
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[Publications] Saeki,T.: "Human P-glycoprotein Transports cyclosporin A and FK506" J.Biol.Chem.
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[Publications] Ueda,K.: "Human P-glycoprotein transports cortisol,aldosterone,and dexamethasone but not progesterone" J.Biol.Chem.267. 24248-24252 (1992)
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[Publications] Shimabuku,A.M.: "P-glycoprotein:ATP hydrolysis by the N-termimal nucleotide-binding domain" J.Biol.Chem. 267. 4308-4311 (1992)
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[Publications] Chin,K.-V.: "Modulation of activity of the promoter of the human MDR1 gene by Ras and p53" Science. 255. 459-462 (1992)
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[Publications] Tanigawara,Y.: "Transport of digoxin by human P-glycoprotein expressed in a porcine kidney epithelial cell line (LLC-PK1)" J.Phamacol.Exp.Ther.263. 840-845 (1992)
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[Publications] Kioka,N.: "Heat shock responsive elements in the induction of multidrug resistance gene(MDR1)" FFBS Lett.301. 37-40 (1992)
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[Publications] Kioka,N.: "Quercetin,a bioflavonoid,inhibits the increse of human multidrug resistance gene(MDR1)expression caused by arsenite" FEBS Lett.301. 307-309 (1992)
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[Publications] Saeki,T.: "Specific drug binding by purified lipid-reconstituted P-glycoprotein:dependence on the lipid composition" Biochim.Biophys.Acta. 1107. 105-110 (1992)
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[Publications] Sugawara,I.: "Primer-dependent amplification of mdrl mRNA by polymerase chain reaction" Jpn.J.Cancer Res.83. 131-133 (1992)
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[Publications] Sugawara,I.: "Preparation and characterization of a murine monoclonal antibody (MDR3M) reactive with mdr3 gene product" Jpn.J.Cancer Res.83. 795-797 (1992)