1993 Fiscal Year Annual Research Report
C_1微生物によるセリン生産とその酵素化学的及び分子遺伝学的研究
Project/Area Number |
04660119
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
和泉 好計 鳥取大学, 工学部, 教授 (40026555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大城 隆 鳥取大学, 工学部, 助手 (00233106)
嶋尾 正行 鳥取大学, 工学部, 助教授 (00032285)
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Keywords | メチロトローフ / L-セリン / 酵素的合成法 / セリン経路 / セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ / Hyphomicrobium属細菌 |
Research Abstract |
本申請者らは、将来の培養原料として有望なC_1化合物のメタノールを炭素源、エネルギー源に用いてセリン経路を有するHyphomicrobium属細菌を培養し、その菌体を用いたL-セリンなどの水酸化アミノ酸の生産についての基礎的な研究を行ってきた。C_1微生物の特異な代謝経路であるセリン経路は従来本代謝酵素類の活性が高くて安定な微生物が見いだされていなかったために、詳細な酵素化学的研究はほとんど行われていなかった。本研究では、すでに本申請者らが見いだしているHyphomicrobium methylovorumを用いてL-セリンの生産法を検討すると共にセリン経路を構成する各種酵素について酵素化学的、分子遺伝学的研究を行うことを目的とした。 H.methylovorumのグリシン耐性変異株であるGM2株は、休止菌体反応系でメタノールとグリシンから34mg/mlのL-セリン生産が可能である。さらに菌株のスクリーニングを行ったところ、71mg/mlのL-セリンを生産できるMN株を見いだすことに成功した。この株によるL-セリン生産においては、1mM CdCl_2を添加することによりL-セリン分解活性を完全に抑制することができ、その結果、グリシンからL-セリンへのモル転換率は100%となった。セリン経路を構成する酵素については、GM2株より均一に精製されたセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(SHMT)の酵素的加水分解を行い、得られたペプチド断片のアミノ酸配列の決定を行った。同時にN末端アミノ酸配列も決定し、これらの配列をもとにDNAプローブを作製した。大腸菌を用いて作製したGM2株の遺伝子バンクとプローブとのハイブリダイゼーション試験を行い、SHMTをコードする遺伝子をクローニングすることに成功した。本遺伝子の全塩基配列を決定し、本遺伝子がコードする蛋白質は434アミノ酸からなり、その分子量は46,068と求められた。また、従来知られているSHMTとのアミノ酸配列の比較したところ、大腸菌由来のSHMTとは55%、ウサギ肝臓由来のSHMTとは44%の高い相同性を有していた。本遺伝子を大腸菌のSHMT欠損株に導入したところ形質変換大腸菌はSHMTを発現し、生産された酵素は免疫学的にも酵素化学的にもGM2株由来のSHMTと同一であった。
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