1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04660126
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
百瀬 春生 東京理科大学, 基礎工学部, 教授 (30219993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 精一 東京理科大学, 基礎工学部, 助手 (70216828)
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Keywords | 低温適応 / プロテアーゼ / 活性上昇 / 限定域変異 / ランダム変異 / 遺伝子工学 / 進化工学 / タンパク質工学 |
Research Abstract |
前年(平成5年)度には、主として自然界より低温適応酵素スクリーニングを行ったので、今年度は第2のアプローチとして、すでに構造の明らかな既知の中温適応酵素を出発材料に選び、この酵素遺伝子をベクターにクローニングした後、遺伝子工学的手法と新しい進化工学的手法を駆使して低温(5-15℃)に適応させてゆく方法に着手した。モデル酵素としてB.amyloliquefaciensの生産するサチライシン(subtilisin)BPN'を選んだ。進化工学的プロセスは2つのステップからなり、ひとつは第1次変異で、プロテアーゼ活性をあえて低下させ、二つ目の第2次変異で活性をintragenic suppressionにより復活させる。実験はサチライシン遺伝子に限定してランダム変異が誘起されるようデザインし、かつ1次、2次の目的変異株が効率的に得られるようにした。特に工夫した点は、1次、2次変異株を選択するために大腸菌の宿主・分泌ベクター系を用い、プロテアーゼ活性検定を一定温度のプレート上で行なったことで、これによりわずかな活性低下株(1次)でも検出分離できた。また、進化サチライシンの生産、単離のためには、遺伝子を枯草菌の宿主・分泌ベクター系にサブクローニングし、大量に分泌発現させた。全体として31株の進化株を得、今回はそのうちの1株、12-12株を代表に選んで遺伝学的、酵素学的に詳細な検討を加えた。その結果、第1次変異によりサチライシン分子のN末端から197番目のAspがAsnに置換(D197N)することによりプロテアーゼ活性が親株の80%に低下し、第2次変異(G131D)により親株の1.5倍(kcat/Km値)に上昇していることが明らかになり、この上昇は10℃の低温域を含む広い温度範囲に及んでいた。タンパク質工学的解析により、これらの遺伝子変異がタンパク質の構造と機能に与える影響についても考察した。次年度はさらなる人工進化に挑戦する。
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