1994 Fiscal Year Annual Research Report
崩壊過程における斜面の水収支と間隙水圧の役割に関する実験的研究
Project/Area Number |
04660171
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Research Institution | KOCHI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
日浦 啓全 高知大学, 農学部, 助教授 (30046495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海堀 正博 広島大学, 総合科学部, 助教授 (30183776)
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Keywords | 斜面崩壊 / 水収支 / 体積含水率 / 過剰間隙水圧 / 間隙水圧の消散 |
Research Abstract |
今年度は最終年度であるため、過去2年の実績のとりまとめを中心としたが、その過程で不十分なところは補完的に実験を行った。崩壊過程における斜面の水収支を考察していくにあたり、斜面土層内への降雨の浸透状況を表すために体積含水率という指標を導いた。浸潤線の降下量の経時的な計測をし、土層の浸潤体積を計算し、それに対するその時点までの総浸透水量の比で表されるが、これを浸透速度として読み換えることができる。体積含水率は降雨開始の初期の10〜20分程度の間に著しく増加をする。この立ち上がりの勾配に対しては降雨強度の影響はなく、しかもその後は土層条件には関係なくほぼ一定条件で推移する。もうひとつの指標は斜面からの流出量である。流出開始の時刻が初期の含水比のみに依存しており、しかもその量は最初から一定である。つまり、土層構造よりはそれまでの降雨履歴が流出現象に関与していることを示す。間隙水圧に関しては、土層条件にはよらず崩壊発生までの流入水量の大きいものほど大きい値を示すことがわかった。 分担者の海堀は前年度までと同様に円筒形状の水槽内に水と土砂を入れ、かき混ぜによって流動エネルギーを与え、その時に発生する間隙水圧の消散の過程についてさらに実験を重ねた。つまり、流動状態下では土砂は浮力を受けて軽くなっているが、その反力として間隙水圧が上昇する。そして、流動が終了すると間隙水圧が徐々に消散していく。崩壊時には斜面の土層が水を含んで液状化して流下し、ついには土石流状態となる。含まれる土砂の組成が混合流体の間隙水圧の消散時間を規定するが、これは流動時間の長さに影響を及ぼすこととなる。この意味で、基礎的ではあるが土砂と水の混合物の流動特性を調べるための重要な実験である。今年度は容器に入れた、高濃度の飽和砂に震動を与え、その時に発生する間隙水圧の大きさ・消散過程について調べた。容積濃度58%ではかき混ぜ実験と同様の挙動を示したが、容積濃度63%と高くなると震動の停止とともに砂の浮遊状態はなくなり、粒子同士の摩擦抵抗が回復する。また、間隙水圧の経時変化から大きな負圧の発生する場合のありことが注目されたがこれは同じ液体状態にあっても密度に粗密の分布があることを示していることが示された。
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